フランス人がよく使う表現、「Systeme D(システムD)」とは?

 パリジェンヌの即戦力には未だに驚かされます。いつもはダラダラの人も危機的状況に対面すると豹変します。そのフットワークの軽さがもっとも発揮されるのは、「フランスの国技」ともいわれるストライキが発生した時です。ストは、1789年のフランス革命以降、民衆が苦労して獲得した権利です。ですから、今でもストはしょっちゅう起こります。そして起こるとパリ中、時にはフランス中が大混乱に陥ります。交通機関は麻痺し、時には燃料の供給が滞り、学校が閉鎖されることさえあります。

 通勤や出張に支障が出ると日本人の私はへきえきしてしまいます。迷惑を被るのですから、怒りだって湧いてきます。ところが、驚いたことに共感してくれるパリジェンヌはいません。誰もが「仕方がない」と肩をすぼめ、臨機応変に対応します。地下鉄が走っていなければ自転車を引っ張り出します。乗用車の相乗りをして助け合います。1時間くらいなら平気で歩きます。

 フランス人がよく使う表現に「Systeme D(システムD)」というのがあります。Dは「Debrouiller(デブルイエ)」のD。「なんとかする」という意味です。交通機関が麻痺しても、なんとかする。飛行機をドタキャンされても、なんとかする。予定を覆されても、なんとかする。嘆く暇があったら、パリジェンヌは自力で解決策を見つけます。結果オーライならそれでいいのです。

全て思い通りにならなくても、結果オーライなら人生、それでよい

 何事も詰めすぎると、イザとなった時、膠着してしまいます。「予定と違う」「聞いていない」「前例がない」などとパニックになってしまうからです。マニュアルに固執し、シナリオに縛られていると、想定外の場面に対応することは出来ません。

 仕事がシナリオ通りに進むとは限りません。人生だってそうです。敢えて断言しますが、人生は思い通りにいきません。予想外の出来事はたくさん起こります。危機は必ず訪れます。災難だってたくさん降りかかってきます。

 そんな時、「こんなはずじゃなかった」と嘆いても仕方ありません。自分を責める必要もありません。後悔したって始まりません。行動あるのみです。

 何もせずに「なんとかなる」こともあるでしょう。けれどもそれは、自分の人生を放棄しているのと同じことです。人の助けを待たずに自分で「なんとかする」。これがパリジェンヌです。

 そして全て思い通りにならなくても、結果オーライなら人生、それでよいのです。

※本稿は『パリジェンヌはすっぴんがお好き』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。