リクルート(インディード)にとって
タイミーは難敵になるだろう

 では、今後はリクルート(インディード)がタイミーを逆転するのでしょうか?

 そうとは言えないのです。この戦い方を見ると、私は、「これはヤフオク!とメルカリの戦いと同じじゃないか?」と感じてしまいます。

 以前はネットの世界にヤフオク!のように圧倒的なシェアを持つサービスがあると、それに対抗するサービスはなかなか育てることが難しいものでした。そこにはネットワーク外部性といって、参加者が多いほど逆転が難しくなる経済原理が働いていたからです。しかしスマホ以降、状況が変わります。

 メルカリはヤフオク!と似たサービスながら、スマホ特化、送料込みのフリマスタイルという形で急速にヤフオク!のシェアを奪います。ヤフオク!よりも若いユーザー層がメルカリを始めたことでネットワーク外部性を超越した形で勢力図が塗り変わりました。

 ヤフオク!にも「即決」という形でもともとメルカリと同じ機能があったために対応が後手にまわったのでしょう。ずいぶん遅れてから「Yahooo!フリマ」という新サービスを始めたのですが、結局、メルカリの台頭を許してしまいました。

 今回の状況をみると、インディードとタウンワークがタイミーの台頭を許してしまった状況は、ヤフオク!がメルカリを成長させたときと非常に似ていることがわかります。

 背景にはおそらく、インディードが世界制覇という目標に目がいってしまっていて、日本市場のスキマバイトというニッチなニーズには目が向かなかったのでしょう。

 しかしタイミーは成長したらリクルートにとっても難敵になります。

 実はタイミーでスキマバイトを募集する大企業では、本当は長期戦力を雇いたいのですがその「お試し」としてタイミーを使う会社が少なくありません。また「イオンのレジ経験者」「介護事業経験者」といった具合に募集に条件がかかっているスキマバイトでは、スキマバイトを入り口に即戦力となるアルムナイを集めやすくなっています。

 要するにスキマバイトを制覇することで、HRビジネスの本丸である雇用全般にタイミーは橋頭保(きょうとうほ)を築きつつあるのです。

 だとすれば本当はタイミーが上場するよりも前に、リクルートはタイミーの株主であるファンドやベンチャーキャピタルに働きかけて、5000億円ぐらいの条件でタイミーを買ってしまったほうが良かったのかもしれません。

 それができなかったということで、スキマバイト市場の未来はなかなかに面白い状況になってきました。お楽しみはこれからです。