中央銀行「データ次第」の金融政策の終焉は近い、“経済予測に基づく政策判断”への回帰に備えよPhoto:PIXTA

「データ次第」の金融政策
異例の政策運営スタンス

 サービス価格を中心にインフレ下げ渋りが続く中、米欧中央銀行の今後の利下げペースを巡る不確実性は相変わらずで、毎月の物価・賃金指標で市場が一喜一憂する状況が続く。

 ここまで個々の経済指標が注目されるのは、中央銀行が「物価や賃金の落着きをデータの実績で確認しないと動かない」という極めて慎重な政策運営姿勢を貫いているためだ。

 例えば米連邦準備制度理事会(FRB)ならば、個人消費支出(PCE)デフレータで2%(6月2.5%)、消費者物価で2.5%(6月3.0%)、民間部門の時間当たり賃金上昇率で3.5%(6月3.9%)といった目安に近付かないと利下げには転じないと市場はみている。

 ただ、現在のように統計の実績ベースで金融政策が決められるという事態は極めて異例だ。政策対応が後手に回ってしまうリスクが大きいためだ。

 金融政策が景気や物価に影響を及ぼすのには時間的ラグがある。通常は半年以上たって効果が出始め、その後何年も影響が残る。加えて、物価・雇用統計は1月も2月も前に起きたことを示すもので、それを基に政策判断を行うのは、バックミラーを見ながら車を運転するようなものだ。

 中央銀行は政策対応が後手に回ることを怖れ、伝統的に経済予測能力を磨き、先行きの景気や物価の予測がどう変化したかを判断基準として政策を行ってきた。これを異例の「データ次第」の政策運営にせざるを得なかったのは、コロナ禍以降に発生した高インフレを中央銀行が的確に予測することに失敗したためだ。