筆者の中に欲が生まれ
もっと大きな冷蔵庫を勧めた結果は…

 そこで素直に話を締めくくればよかったのですが、私の中に欲が生まれました。もう一ランク大きなものを設置できるのではないかという欲です。大きいサイズであれば、その分多くの飲料を入れることができ、もっと売り上げアップにつながるという発想です。営業所に帰れば、「こんな大型のクーラーを売ってきたのか。偉いぞ!」と上司から褒められるに違いありません。

 難色を示す奥さんに「ここを片づければ、大型でも問題ありません。何よりもお店の売り上げが格段に違ってきますから」と強く勧め、不承不承の契約をとることができました。私は意気揚々と営業所に帰ってきました。上司から褒められ、一人ひとりの成績を示す壁の表に成約のシールを張り付け、得意満面でした。

 しかし、ここから本当の苦労の始まりです。

 片づければなんとか設置できるはずの店内の設置場所が、息子さんの反対でなかなか空けることができません。

 その後も話は進まず、春先に契約をもらったクーラーは夏場になってもお店に搬入することができません。営業所の倉庫脇に置いてあるので雨風の影響で梱包も少し傷みが出てきています。

 息子さんを交えて何度も説得にあたり、秋口にやっと設置することができましたが、その後も「クーラーが大きすぎて店内が暗くなった。じゃまだ」と散々の評価を浴びることになりました。

 この出来事を通じて私は、「ゴールは自分のためではなく、取引先のためであること。それを誤ると誰も幸せになれない」ということを実感したのです。