酒屋の頑固親父が「あんたが来ないと寂しい」コカ・コーラを日本一売った営業マンが客を虜にするワケPhoto:PIXTA

四国コカ・コーラ ボトリング社で営業職として活躍し、日本コカ・コーラ社主催の全国セールスフォースコンテストで第1位を獲得した山岡彰彦氏の著書『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』から一部抜粋して、同氏の営業ノウハウをお届けします。今回のテーマは「顧客との信頼関係の築き方」について。

「あんたのところは……」
「酒屋の頑固オヤジ」の決まり文句

「あんたのところの商品は他と比べて本当に高い」

 納品を終えて伝票を渡すたびに、お店から言われる決まり文句です。そうは言われても営業担当が勝手に卸値を変えることはできません。

「いえ、どんなに利幅のある商品でも売れなくては意味がないですよね。私たちは商品がより多く売れるためにCMを流し、いろいろなプロモーションを行って、より売りやすいようにお店を支援しているのです。原材料も厳選したものを使っているのでこの価格になります。その点をご理解ください」

 このように伝えますが、相手はそう簡単に納得はしてくれません。営業にとって取引先との納品価格に関するやり取りは永遠の交渉テーマです。会社としてはより高く卸したい一方で、取引先はより安く仕入れたいのですから。

 北沢酒店は八百屋と酒屋に鮮魚店が合体したようなお店です。昔気質の店主が取り仕切る家族経営のお店で、近所からお客さんがひっきりなしに来店しています。お店は大繁盛ですが、売場には箱のまま積み上げた商品、埃を被った陳列棚、酒屋といいながら店内には大きなまな板と流し台があり、そこで店主が仕出しの魚をさばいています。

 正体のよくわからないお店ですが、先輩曰く「この雑然とした店構えだから売れるんだ」とのこと。そうかなぁと半信半疑ながらも、お店の盛況ぶりを見るとそうかもしれないという気になります。

 店先にはずらりと自販機が並んでいますが、店内だけでなく店頭も同じ状況です。他社の飲料自販機やビールの自販機も負けず劣らず汚れています。毎回訪問するたびに汚れを拭き取って掃除をするのですが、毎日の魚や野菜の持ち込みで水が掛かったり、泥がついたりととても追いつきません。