コカ・コーラを日本一売った男の「ゴリ押し営業」失敗談!渋る顧客に「デカい冷蔵庫」を買わせた末路Photo:picture alliance/gettyimages

四国コカ・コーラ ボトリング社で営業職として活躍し、日本コカ・コーラ社主催の全国セールスフォースコンテストで第1位を獲得した山岡彰彦氏の著書『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』から一部抜粋して、同氏の営業ノウハウをお届けします。今回のテーマは「ゴリ押し営業の失敗談」について。

清涼飲料のビジネスでは
「冷蔵庫の売り上げ」が意外と重要!

 営業の仕事のノルマは、取引先であるお店に商品をより多く売っていただくことで達成することができます。達成するにはより多く売れる仕組みをつくれるかどうかが鍵となります。お店の倉庫に大量納品するのがゴールではありません。そこから先のお客様に買っていただくことこそが重要なのです。そのために多くの企業と同様、清涼飲料メーカーでも広告やプロモーションといった販売促進活動を展開し、そこまでやるのかといった努力を重ねているのです。

 清涼飲料の場合、自販機と並んで大きな力となるのが自社のトレードマークの入った飲料のクーラー(冷蔵庫)です。これがあるのとないのとでは売り上げが大きく変わってきます。当時から飲料をクーラーで冷やして売るのは当たり前でしたが、トレードマークの入ったクーラーで美味しそうに冷えている飲料が並んでいると、それだけで売り上げが格段に違ってくるのです。

 このため現場では自販機に併せて、クーラーの売り込みにも熱が入ります。一軒ごとの売り上げが向上するということは、そのまま自分の営業成績がアップすることにもつながり、社内での自分に対する評価も変わってきます。しかし、販売機材は無償ではありません。当時は軽自動車が買えるくらいの価格のものもあり、お店に対してそれなりの負担をお願いすることになります。

 機材を設置すれば売り上げがアップすることがわかっていても、「はい、そうですか」と簡単に設置を承諾されることはありません。そのため、会社も販売機材の設置に奨励金を出したり、表彰制度を設けたりと一台でも多く設置するよう社員に働きかけ、時には結構なプレッシャーが上司からかけられます。

 まだ入社間もない私にとってもその状況は変わりません。朝礼で「今日は絶対一台成約してくるぞ!」と全員で唱和してから営業所を出発するのですが、少し前まで学生だった自分にそんな高額な機材をお店に買っていただくノウハウなどありません。たいていパンフレットを渡すだけで終わり、「後で見とくよ」とのそっけない一言でポイとそのあたりに渡したままの状態で捨て置かれるのが毎回のパターンでした。

 そんなある日、谷口商店というお店の奥さんにクーラーのカタログを渡したところ、「うーん、冷蔵庫ねぇ、いまのものが随分と古くなったので替えてもいいかしら」という返事。これはチャンスだと思い、懸命にクーラーを置くことのメリットを伝えたところ、「じゃあ、買おうかしら」というところまで漕ぎつけることができました。