イスラエルが敵対する勢力の幹部が殺害された二つの挑発的な攻撃は、米国が懸命に食い止めてきた紛争拡大の瀬戸際へと中東を押しやっている。イスラエルが7月30日夜、レバノンの首都ベイルートを空爆し、同国のイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高幹部を殺害したことで、ヒズボラが報復してくるとの懸念が生じた。それから数時間後の真夜中すぎに、イスラム組織ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤ氏が訪問先のイランの首都テヘランで攻撃を受けて殺害された。これにより見通しが非常に複雑になり、中東での紛争拡大への懸念が、パレスチナ自治区ガザで紛争が始まってから10カ月近くの間でこれまでにないほど高まっている。イスラエル軍はレバノン国境付近での戦闘激化やイランとの緊張悪化に伴い、ガザでの作戦の段階的縮小を強く望んでいる。イスラエルの戦争は複数の局地戦のようなものに発展しつつある。米国の外交官たちは何カ月間も中東各地を回ってそうした事態を防ごうとしてきた。