期待の可視化・共有ができているのに成果が出ない
→上司は「できない理由」を考えるべき

 もし、共有できているのに部下が期待に応えていないというのであれば、次の段階として、リーダーは自身の指導法を考え、部下が期待に応えられるように「コーチする」ことを心がけるべきです。

 つまり、できないことを叱責するのではなくて、できない理由を考え、克服する方法をアドバイスするのです。

 もしかしたら目標が高すぎるのかもしれません。

 登山に例えると、登山経験のない人がいきなり3000m級の山に登ろうとしても無理なので、まずは身近な山から登って経験を積み、少しずつ目標を高くしていくはずです。仕事の目標も同じです。部下が自分の実力を理解していないのなら、実力に見合った目標設定のアドバイスが必要です。

 目標が適正なのに登れないのなら、部下の登山方法が間違っているのかもしれません。リーダーは自身の経験や他の人のやり方を踏まえて、正しい方法をコーチしなければなりません。

 私のお客さまに、モンゴルのタワンボグドという企業グループの創業者バータルサイハンさんがいます。

 一代で会社を興し、今では20社を経営しています。話が横道に外れますが、モンゴルは人口約345万人の小さな国(国土面積は日本の約4倍ですが)で、首都のウランバートルには約169万人が住んでいます。

 バータルサイハンさんの会社は首都で1万2000人を雇用しているので、社員の家族まで含めると首都の人口の2%ほどの人を養っていることになります。

 さて、バータルサイハンさんは「PDCAF」が大事だと言っています。PDCAはご存知のように、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのプロセスですが、FはFollow(フォロー)だというのです。

 フォローとは、ここでいうコーチのこと。リーダーが的確なフォローをすることで、PDCAを回す効果が高まります。バータルサイハンさんのPDCAFが大事という指摘は、その通りだと思います。

 一方、スポーツを見ればわかるように、コーチと選手の間にコミュニケーションが成り立っていなければ、求める結果を出せません。リーダーと部下の関係も同じ。何度かお話ししたように、コミュニケーションは意味と意識の両方で成り立つので、リーダーと部下の間で意識が共有されていなければコミュニケーションは成り立ちません。

 コミュニケーションを違う言葉で表せば信頼です。

 信頼されているリーダーが具体的アドバイスをすれば、部下は本気でそれに取り組み、頑張るでしょう。しかし、信頼されていないリーダーが何を言っても、部下は立場上「頑張ります」と答えたとしても、心の中では「お前こそ頑張れよ」と舌を出しているかもしれません。 

(小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶)