82歳で「悠々自適」を封印
「生涯働く」決意のもと起業した

「みんなそれぞれによく考えてみてよ。次のステップについては来月の会議で議論しましょう」ということでお開きになり、あとは居酒屋談義になってしまうのがしばしばです。

 こんなふうに、議論ばかりしていて、行動は驚くほど遅いペースでしか進まないので、気がついてみると、世界の多くの国々に、生産性でも成長力でも、どんどん抜かれていくように思えてなりません。「別に抜かれたっていいじゃあないか」という人もいますが、一度は「世界第2位の経済大国」ともて囃されてしまった日本人は、そんなことになったら、きっととても惨めな気持ちに苛まれるでしょう。

 そして、私にとっての大きな問題は、その惨めな思いをするのが、私たち高齢者ではなく、私たちの孫たちの世代だということです。

 何の責任もなく、無邪気に毎日を過ごしている孫の世代の子供たちに、そんな思いをさせることがわかっていながら、自分だけは「悠々自適」の毎日を送る?そんな恥知らずなことができるでしょうか?

 少なくとも私にはできません。だから私は、突如思い立って、自分の「悠々自適」は封印することに決めたのです。

 今日現在享受している「世界でも例を見ないような手厚い年金制度や医療保険制度」が、やがては破綻するだろうということに、薄々気がついている高齢者は結構います。

 しかし、その中には「俺たちの世代はギリギリ逃げ切りセーフだけどね」と、臆面もなく言っている輩もいるのです。

 さすがの私も、こういう言葉を聞くと、手がワナワナと震えるほどの怒りを感じます。「そんな無責任な連中と一緒にされるのだけはごめん被りたい」という気持ちが、否応もなく強くなり、せめて「生涯働く」決意をすることで、「自分は違うんだと身をもって示すしかない」とまで、思い詰めるに至ったというわけです。