子どもと遊ぶシニア写真はイメージです Photo:PIXTA

72歳でソフトバンクの副社長職を退き、悠々自適暮らしを送るも、82歳にして一念発起して起業。84歳になった今も往時と変わらず働く…それが著者の松本徹三氏の毎日だ。「変わり種」を自称する彼は、いかにして「生涯現役」にめざめたのか?※本稿は、松本徹三氏『仕事が好きで何が悪い 生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

72歳で副社長職を辞するも
「悠々自適」の生活に疑問を抱く

 私自身のことを例に引くのは、あまり適切ではないかもしれません。なぜなら私は、相当な「変わり種」だからです。

 82歳近くにもなって、ある日突然一念発起して起業し、84歳になった今も、毎日ハラハラ、ドキドキしながら、現役時代と何ら変わらず、普通に仕事をしているのですから、「変わり種」と呼ぶしかありませんよね。

 ですから、私は、同年配の方々に「あなたも私のようにやってみたら」というつもりは毛頭ありません。しかし、私がなぜそんな気持ちになったのかは、やはり一応説明しておくべきかと思います。

 72歳でソフトバンクの副社長を辞めたあとは、私は自分の興味に引っ張られるままに、気ままに世界中を飛び回り、コンサルタントのような仕事をしていたのですが、コロナの蔓延を契機に、「こんな状態では当分は海外には行けそうにもないな。それならもうこの辺でいいか」という気持ちになり、「引退」を宣言して「悠々自適」の生活に入ることにしました。

 これで、あとは「良い老人」になって毎日をのんびりと過ごすだけだと思ったのです。

 ところが、そんな気持ちは、結局あまり長続きはしませんでした。少し退屈になったこともあったのかもしれませんが、やはりそれ以上に、「待てよ、こんな生活をしていて、本当に『良い人』になったと言えるのだろうか?」という気持ちが、ふつふつと湧いてきたのです。

 その原因は、自分が住んでいる日本という国が、あまりにも危うい状態にあることに、嫌でも気付かされたからです。そうです。今の日本は、本当に相当危うい状態にあります。