議論ばかりで行動しない
日本人は茹でガエル状態

 5歳で終戦を迎えた私は、日本が絶望的な状態から少しずつ回復し、少しずつ誇りを取り戻す中で育ちました。そして、とにかくやみくもに働いているうちに、「知らぬ間に世界第2位の経済大国になっていた」という驚くべき世の中の移り変わりを、身をもって体験してきました。

 しかし、その後の日本は、あまり芳しくない状況が続いています。高度成長の行き着いた果てはバブル景気で、それが弾けると、その後には「失われた30年」が続き、今日現在もこの状況はあまり変わっていません。そして、このような状況に、やがては何らかの変化が訪れるのか、それとも、これから50年、60年と年月が経っていっても、何も大きな変化は起こらず、状況はどんどん悪くなっていくのか、未だに誰にも見えていません。

 私自身が状況をどう見ているかといえば、「今のままなら、世界の中での日本の経済的な位置は引き続き下降線を辿り続けるだろう」と思っています。

 なぜかといえば、理由は簡単で、今の日本人には押し並べて「危機感」というものが乏しいからです。要するに「茹でガエル」状態なのです。

「危機感」があれば、何らかの凄まじい行動力が生まれるはずですが、今の日本人は「議論」ばかりで、一向に行動しません。本当は湯船の中は既に相当の高温になっているのに、「程よい微温だ」と錯覚し続け、思い切ってそこから飛び出すことが、全くできないのです。

 大企業の多くの会議がその典型ですが、「そうだよなァ」と言って、一応は結論めいたものには同意するのですが、「でも難しいんだよなァ。色々あるからねェ」という意味不明の「決まり文句」が必ずこれに続きます。