「時代劇に出たい」という夢は
神様に願うだけでは実現しない

 ずっとずっと、時代劇に出演したかった。夢、と言ってもいい。

 きっかけは、小学生のときに家族で行った会津旅行。白虎隊の少年たちの痛ましい死を知り、歴史の中に埋もれていった多くの人の涙があることを知った。

 でも、本格的に自国の歴史を知りたいと思ったのは、モデルになって海外で仕事をするようになってからだった。出会うモデルたちは自分の国の歴史や文化に誇りをもっていて、家族のことを話すように、歴史上の人物を語る。なのに私は日本のことを何も知らない。勉強しなくちゃと思い、まずはとっつきやすい時代小説や歴史小説を読むようになった。そして徐々に時代劇へのあこがれは募っていった。

 時代劇に出るなら、馬には乗れたほうがいい。剣も使えたほうがいい。そう考えて、個人的に馬術や殺陣を習うようになった。なんのオファーもないのに、だ。でも、声がかかってからじゃ間に合わないから。……こうやって書いてみると、我ながらけっこうな妄想力だと思う。でもそれがよかったのだ。

 ちなみに、殺陣を習ったのは侍の役で出演する可能性もあると思ったから。この身長では、お姫様や町娘はなさそうだな、という自己認識。でもまさか、将軍をやるとはね(笑)。

 私は夢を口にすることにしている。言葉には魂があるから、やりたいことは必ず口にする。夢をかなえてくれるのは、神様ではなく人間だから、ちゃんと口にしなくては誰の耳にも届かない。

 『大奥』からのオファーのきっかけも、私がテレビのトーク番組で「時代劇に出たい」と言ったからだった。それをたまたま『大奥』の脚本家の方が観てくださっていて、冨永愛に吉宗をやらせてみようとひらめいたと聞いた。

代表作と言える役に巡り合えたのは
恥ずかしがらずに夢を口にしたから

「夢を口にして、かなわなかったら恥ずかしい」と思うかもしれない。でも私は、恥ずかしいからこそ準備をする。殺陣も馬術も着付けも習う。準備をしながら、夢を口にする。誰かに届け、と祈りながら。