「いやいやいや、ありえない…」冨永愛が“まさかの夢”を叶えるために「必ずやっていたこと」とは?(c)Yusuke Miyazaki

日本を代表するトップモデルとして世界的な活躍を魅せている冨永愛。俳優活動にも精力的に挑戦している彼女には、長年抱き続けてきた「時代劇に出る」という夢があった。しかし2023年にNHKドラマ『大奥』で8代将軍・吉宗役を演じ、見事にその夢を成就させている。彼女はどのようにしてその役を引き寄せることができたのか?彼女の考える、夢を叶えるための方法とは?※本稿は、『冨永 愛 新・幸福論 生きたいように生きる』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。

脱衣所で「上様?」「吉宗様?」
ドラマ『大奥』で得た大きなチャンス

 私は温泉が大好きで、地方の小さな湯治場のような温泉に行くこともある。脱衣所で素っ裸になっている私に、地元のおばちゃんたちは気さくに声をかけてくれる。

「背が高いのねぇ」「モデルさんみたいねぇ」って。もちろん「実は私、モデルなんですけど」などとはけっして言わない。「うれしいなぁ。なろうかなぁ」なんて言って、ガハハハとみんなで笑うのが楽しい。

 ところが2023年、状況が変わってしまった。そう、すっかり身バレしてしまったのだ。しかも「えぇ?上様?」と言われる。「将軍様?」「吉宗様?」あ、そっち?知っていただき、うれしいんだけど、ちょっと服が脱ぎにくい……。

 それもこれも、NHKドラマ『大奥』に八代将軍・徳川吉宗役で出させてもらったからだ。あっという間に冨永愛が幅広い世代の人に知られるようになった。

 このドラマは、よしながふみさんの漫画が原作になっている。若い男子にしか感染しない赤面疱瘡という伝染病のせいで、極端に男性が減った江戸時代。将軍は女性になり、大奥には生き残っている貴重な男性が集まることになる。男女逆転の大奥なので、将軍は打掛を着た女性が演じる。

 出演のオファーがあったとき、私は「よっしゃー!」とガッツポーズをした。ずっと夢見ていた時代劇に出演できるのだ。こんなにうれしいことはない。

 でも、どんな役なのかがわからない。さっそく原作を読んでみた。すばらしい物語だった。三代将軍・家光から始まった男女逆転の大奥が、幕末・明治維新で閉じられるまでが、まさに大河のように描かれていた。めちゃくちゃおもしろくて、一気に読み終えた。そして考えた。私、どの役なの?

 三代将軍・家光は少女だし、五代将軍・綱吉はめっちゃセクシー。原作漫画のビジュアルから考えても、私には吉宗が妥当だが……吉宗?いやいやいや、ありえない。オープニングから登場する吉宗は、シーズン1では主役だし、出番も多い。演技経験が少ない私に、こんな大役がくるはずがない。

 ところが、フタをあけてみたら本当に吉宗だった。プレッシャーははなはだしかったけれど、大きなチャンスをつかんだと思えた。