レシピ不在の「蘭ブレンド」は
手探りで味を再現
蘭を代表するコーヒーは、マスターが自ら豆をブレンドしていた「蘭ブレンド」だ。しかし、レシピは残っていなかったので、豆の卸業者にあった発注伝票からブレンドする豆の種類や配合を推測。手探りで何度もブレンドし、常連客に試飲してもらいながら、深く濃く酸味のあるマスターのブレンドの味を再現した。
2人も時々食べていた「チーズトースト」は、使うチーズをチェダーチーズとモッツァレラチーズに変更し、具材にもアレンジを加えてリニューアル。「蘭スペシャル」という特別なセットとして終日提供している。
「先代の頃はフードメニューはあまり多くなくて、小倉あんと生クリームで味わう『ナゴヤのホットケーキ』や『エッグトースト』『昔ながらのハムサンド』など、私たちが新たに考案しました」(博子さん)
18年4月に再オープンしてから、6周年を迎えた。当初、先代の頃からの常連客も足を運んでくれたが、お客さんの数はそれほど多くなく、博子さん1人で喫茶店を回し、美和子さんは引き続き花屋を営業していた。
それが、去年頃からSNSによる口コミなどにより徐々にお客さんが増え、週末など忙しいときは美和子さんも喫茶店を手伝うように。さらに最近では、レトロ喫茶好きの若い女性や、日本の純喫茶を巡る外国人なども多く訪れるようになり、アルバイトを雇うまでになった。
「私たちがこのお店を受け継いだことで、昭和の名古屋の喫茶店文化を若い世代や外国の方に知ってもらうことができる。このレトロな空間を目にして喜んでもらえたり、古い建物を新鮮に感じてもらえたりするのが、とってもうれしいんです」(美和子さん)
博子さん、美和子さん姉妹によって大切に受け継がれたレトロな空間とおいしいコーヒーを味わいに、その扉を開けてみてほしい。