6月に上海で開催された中国最大級の国際介護福祉展「AID」(筆者撮影)6月に上海で開催された中国最大級の国際介護福祉展「AID」(筆者撮影)

長年、日本と中国の介護ビジネスに携わってきた筆者は、今年6月中旬に中国・上海で開催された中国最大級の国際介護福祉展「AID」(旧称:China Aid)を訪問した。コロナ禍後、久しぶりの中国訪問で、多くの地元介護事業者と対話する機会を得た。本記事では、改めて感じた中国と日本の介護事業者間のギャップ、そして中国市場で介護ビジネスを展開しようとする日本企業の課題についてレポートする。(日中福祉プランニング代表 王 青)

急成長する中国の福祉介護展示会

「AID」は2000年に始まった展示会で、中国の急速な少子高齢化と歩調を合わせるように大きく成長し、東京で開催されるアジア最大級の「国際福祉機器展H.C.R」を追い抜く勢いを見せている。主催者によると、今年は出展社数、来場者数ともに過去最高を記録したとのことだ。各ブースには人だかりができ、会場内の熱気は中国の福祉介護・高齢者ビジネスの盛り上がりを如実に物語っていた。

 海外からも多くの国・地域が参加する中、日本は過去最多の73社が出展し、最も出展社の多い国となった。車いすやベッドなどの福祉器具に加え、介護用具のレンタルノウハウや施設運営などのソフトサービスまで、幅広い分野で日本の「介護」をアピールしていた。

6月に上海で開催された中国最大級の福祉介護展示会「AID」(筆者撮影)6月に上海で開催された中国最大級の福祉介護展示会「AID」(筆者撮影) 拡大画像表示

 コロナ禍以降、中国の政治、経済、社会環境は大きく変化し、現在の日中関係は良好とは言い難い状況にある。近年、「チャイナリスク」を懸念し、中国に進出していたさまざまな分野の日本企業が撤退や事業縮小の動きを見せている。約2年前からは日本の大手介護事業者も相次いで中国市場から撤退している。

 このような逆風の中で、なぜ今年も多くの日系企業が参加したのだろうか。筆者が会場で話を聞いた日本の関係者たちは、一様に「この中国という巨大市場を看過できない。ビジネスチャンスはある」と口にしていた。