宇宙で経験したことの意味を理解できなかったころ

 宇宙へ行き、無重力空間で、国籍も人種も世代も異なる仲間たちと生活しミッションに取り組むこと、地球を外から眺めること、宇宙船の外へ出て、死と隣り合わせの状態でさまざまな作業を行うこと。これらはいずれも、何ものにも代えがたい素晴らしい経験でした。

 しかし、宇宙から帰ってきたばかりの僕には、宇宙で経験したことの意味を理解することができませんでした。特に最初のフライトは2週間だけであり、地球では絶対に経験できないさまざまな出来事に感情を揺さぶられ、ミッションに追われているうちに終わってしまった感覚がありました。

 しかもその後、すぐに2回目のフライトのための準備が始まったため、「宇宙へ行って、自分の何が変わったのか」を落ち着いて考える余裕がなかったのです。

 それでも、「宇宙に行って人生観は変わりましたか?」という質問には、肯定的な答えを用意し、内面的な成長を見せなければいけない。当時の僕はそう思っていました。それが、多くの人が僕に望んでいることだからです。

 宇宙に行って、果たして自分の人生観が変わったかどうか確信が持てないけれど、人々の期待に応え、「変わった」と言わなければならない。

 そんなギャップ、違和感を抱えながらも、2回目のフライトの準備に忙殺され、2009年、僕は再び宇宙へと飛び立ちました。