自動車整備事業者の休廃業・解散が過去最多のおそれ、事業断念を迫る「4つの変化」とは?交通の多様化、インフラの整備や維持費などを理由に若者の自動車離れが進んでいると言われて久しいが、自動車整備事業者の変化はそれ以上に大きい(写真はイメージです) Photo:PIXTA

夏休み真っ盛りのこの時期、帰省や旅行の移動手段として自動車を利用する人は多い。公共交通機関もいいが、暑い中、自宅から目的地までを座ったまま移動できることは、自動車を選ぶ大きなメリットだ。そして、自動車の安全を維持するために欠かせない存在が車検や定期点検を行う自動車整備事業者だ。しかし、事業を停止して市場から姿を消す自動車整備事業者が近年増えているのをご存じだろうか。今回は国内の自動車整備事業者(※)の休廃業・解散や経営の実態について解説する。(帝国データバンク情報統括部情報取材課 阿部成伸)
※「自動車一般整備業」または「自動車車体整備業」を主業とする事業者、個人事業者を含む

「業歴50年以上」が
過半数を占める長寿業界

 国内にはどれほどの自動車が走っているのか、まずはそのデータから確認したい。一般財団法人自動車検査登録情報協会によると、国内自動車保有台数(軽自動車を含む乗用車のデータ、各年3月末時点)は、1966年に約228万9000台だったが、6年後の1972年には4.8倍となる約1091万5000台となり、初めて1000万台を突破。1979年には約2140万9000台と2000万台を突破した。

 高度経済成長期における技術発展や1971~74年にかけて毎年の出生数が200万人を超えた第二次ベビーブームなどを背景に、所得・家族が増え、自動車を所有する家庭が急増した。

 このような自動車保有台数の変化に伴って増加したのが、町の整備工場を中心とする自動車整備事業者だ。それでは現存する自動車整備事業者はいつ頃から事業をはじめたのだろうか。

 帝国データバンクが保有するデータから全国約1万2900社の自動車整備事業者の業歴(創業年から2024年までの期間)について、その分布状況を調べたところ、最も多かったのは「50年以上」で構成比は53.6%と過半数を占め、以下、「40年~50年未満」(同20.3%)、「30年~40年未満」(同10.4%)と続いた。

 業歴が長い事業者ほど数が多い傾向が見られ、業歴30年以上がなんと全体の84.4%を占めた。このような傾向がみられる業界は非常に珍しく、「清酒製造事業者」(業歴50年以上の事業者の構成比94.8%)や「旅館事業者」(同67.7%)などに続く、長寿事業者の多い業界のひとつと言える。