ラーメン店の倒産が過去最多!「ミシュラン掲載の人気店」までが破綻したワケ「だし廊」店舗(筆者撮影)

コロナ禍を耐え抜いたはずのラーメン店の倒産が相次いでいる。2023年度(2023年4月~2024年3月)のラーメン店の倒産は、過去最多の63件で前年度の2.7倍に増えた。一杯のラーメン代は「千円の壁」と言われてきたが、大都市ではゆうに千円を超えるラーメンでも行列ができる人気店もある。だが、ブームに乗じた店舗拡大は両刃の剣だ。もともとラーメン店は参入障壁が低く、生き残りが厳しい業界と言われるが、原材料代や光熱費が高騰するなか、集客競争とコストアップのはざまでラーメン店の模索が始まっている。(東京商工リサーチ 東北支社情報部 早坂成司)

負債総額は約2億6000万円
今年最大となった人気店の倒産

 ラーメン店は全国に約1万8000店舗ある。このうちの約半数が個人経営で、市場規模は約6000億円と巨大だ(経済産業省経済センサス活動調査)。

 国民食であるばかりか、今や外国人にも知られた日本の食文化でもある。2020年に観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向」によると、訪日客が日本滞在中に食べた「外食」のうち、「一番満足した飲食」ではラーメンが「肉料理(焼き肉、すき焼きなど)」に次いで堂々の2位にランクしている。

 当然だが、ブームから文化へと成長した市場で、生存競争は激化した。身軽な経営も多く、倒産以上に多いのが店舗の閉鎖や撤退、オーナーチェンジによる店舗の衣替えである。居抜きで設備や内装はほとんど変わらず、看板だけが変わった新たなラーメン店は少なくない。ラーメン店経営は、腕やカンだけでなく、ブランディングやSNSの活用、ウェブ戦略など、現代ならではの能力が問われる時代になっている。

 2024年2月、仙台の人気ラーメン店「だし廊」を展開する(株)ブロスアップが仙台地裁に民事再生法の適用を申請した。地元の人気ラーメン店で、仙台市内に6店舗を展開していた。負債総額は約2億6000万円と、今年発生したラーメン店の倒産では最大規模となった。

 ブロスアップは2016年7月、だしソムリエの資格も持つ社長の原田佳和氏がラーメン店での経験を生かして創業し、1号店「だし廊 DASHIRO」をオープンした。2018年12月に法人化すると、「だし廊」の店名で2号店、3号店と短期間で積極的に出店した。

 博多の豚骨ラーメン、北海道のみそラーメンが有名だが、仙台のご当地ラーメンには特産の仙台みそを使った「仙台ラーメン」がある。だが、仙台みそベースが多数派を占めるわけではなく、みそ系やしょうゆ系などバリエーションは幅広い。他地区に負けずラーメン店の数は多く、市内にはラーメン店がひしめき、群雄割拠の様相を呈している。

 このなかで、同社が徹底してこだわったのは、社名の由来にもなった「だし」だ。飛び魚だし、貝だし、鶏だし、根菜だし、エビだしなど、多彩なだしをベースにしたラーメンが人気を博した。

 また、創業当初から店舗で練り上げた自家製麺も定評があった。この「麺」と「だし」をベースにしたブランディング戦略が功を奏し、地名度は瞬く間に広がった。口コミ評価も高く、「ミシュランガイド宮城2017」にも掲載されたほどだ。地元メディアが集計するラーメン店の人気ランキングでは常に上位にランクされ、仙台屈指の人気ラーメン店へと駆け上がった。