しかし、以上は私のように「かなり数値が高い人の場合」の話です。基準値を多少オーバーするくらいなら、心配することはありません。

「よれよれカサカサ」より
「脂ギッシュ」でありたい

 バブルの頃でしょうか。“脂ギッシュ”なる言葉が流行りました。「脂ぎる」+「エネルギッシュ」の造語で、精力的なおじさんを冷やかし半分でこう呼んだのです。脂ギッシュなおじさんの顔には、確かに脂が浮かんでいたと思います。

 この造語は、医者の立場から見ても、よくできていると思います。というのは脂が多い人は、実際にエネルギーや精力があって、活動的だからです。

 中性脂肪は、血液の中に溶け込んで全身を巡ります。そして、活動のエネルギー源として使われます。つまり、中性脂肪が十分にある人は、それだけエネルギーを使うことができるのです。活力があり、パワフルで精力旺盛、疲れ知らずなのは、中性脂肪があるからこそなのです。

 反対に、中性脂肪が少ない人は、元気がなく、疲れやすくなります。エネルギー不足で、体温の調節をうまくできないため、暑さにも寒さにも弱くなりがちです。高齢者の中に、夏の冷房を寒く感じたり、冬には手足に極度の冷えを感じたりする人がいるのは、このためです。

 また、中性脂肪の少ない人は、免疫力も低下します。がんや感染症などの病気に弱くなり、アレルギー症状も出やすくなったりします。

 さらに美容面でも、肌に艶や潤いがなく、肌荒れを起こしたりします。

書影『コレステロールは下げるな』(幻冬舎)『コレステロールは下げるな』(幻冬舎)
和田秀樹 著

 これはビタミンAやD、Eなどの吸収が悪くなるためでもありますが、そもそも体を正常に保ち、活動するためのエネルギーが枯渇しているからなのです。

 もちろん、大量にあり過ぎるのは問題ですが、不足するのはさらによくありません。とくに高齢になるほど不足の害は大きくなります。

 疲れやすくなる、暑さや寒さに弱くなる、肌がカサつく、力が出ない、気力が湧かない、精力が衰えたなど、「元気がないな」「カサついてきたな」と自覚したら、それは中性脂肪が足りていないサインと考えましょう。

 逆に“脂ギッシュ”や“ギラギラ”は、健康で長生きに向かうGOサインなのです。