元気な人の美味しい習慣殺菌温度の違う牛乳を使った実験の結果。実験では6種類の牛乳を用意。詳細は記事2ページ目へ

ふだん何気なく飲んでいる牛乳。様々な製品が発売されていますが、違いはあるのでしょうか。管理栄養士の小山浩子さんによると、牛乳の殺菌温度によって牛乳のタンパク質に違いがでるといいます。実験で分かった驚きの結果とは――。ジャーナリストの笹井恵里子さんが聞きました。(管理栄養士・料理家 小山浩子、構成/ジャーナリスト 笹井恵里子)

搾りたての生乳に含まれる
「ラクトフェリン」のすごさ

――前回は熱中症予防として、また子どもの成長を促したり、中高年の老化予防として牛乳が優れた飲みものであるというお話でした。また一口に牛乳といっても、「牛乳」「成分調整牛乳」「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」「加工乳」「乳飲料」の6種類に分けられ、小山さんは、「牛乳」がおすすめということですね。

小山 そうです。「種類別名称」の項に「牛乳」と記載されている商品が、生の乳(生乳)を加熱殺菌しただけのもので成分無調整です。乳脂肪分の一部を減らしたり除去した「成分調整牛乳」「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」もありますが、乳脂肪分には皮膚や粘膜の健康を保つビタミンA、抗酸化作用があって若返りビタミンといわれるビタミンEが含まれています。

小山さんが「おいしい」という「農協牛乳」のラベル小山さんが「おいしい」という牛乳のひとつ「農協牛乳」のラベル。「種類別名称」と「殺菌」の項目がある 拡大画像表示

――そして成分無調整の中でも、殺菌温度によって牛乳のタンパク質に違いがみられるそうですね。今日はそれが目で見てわかる実験をするということで、ドキドキしながらダイヤモンド編集部の方と一緒にうかがいました。

小山 そうなんです。後ほどぜひご覧いただきたいのですが、その前に何のために殺菌をするか、みなさんに知ってほしいのです。それは安全に消費者に牛乳を届けたいというメーカー、企業サイドの思いです。牛乳は栄養価が高い一方で、とてもデリケートな食品であり、安全管理が難しい面もあるんですね。

 ただ、無殺菌、搾りたての生乳をそのまま飲めば、母乳に含まれるタンパク質「ラクトフェリン」を摂取できます。

 ラクトフェリンには免疫細胞を活性化させる、感染症を予防する、骨の機能を高めるなどさまざまな働きがありますが、無殺菌ならこの栄養素を熱の変性を受けない状態でまるまる摂取できるのです。実は世界で唯一、無殺菌で生産を許可されているファームが北海道にあるんですよ。「想いやり生乳」と言います。

――すごい! 飲んでみたいです。

殺菌温度が高いと
タンパク質が変化する

小山 インターネットで注文し、取り寄せることもできます。私が以前住んでいた場所の近くのスーパーには置いてあったので、飲んだことはあります。最高においしいですが、180mlで2000円ととても高価。やはり無殺菌で国の許可をもらうためには、牛舎の消毒や清掃、牛の管理がとても大変なんですね。おそらくその価格でも割に合わないくらいでしょう。

 そしてかつて無殺菌を販売していて、今は63度で加熱して殺菌する低温保持殺菌牛乳を販売しているのが東毛酪農業協同組合です。低温殺菌の中で、最も低い温度です。

 牛乳の殺菌方法は、その温度と時間により「超高温殺菌」「高温殺菌」「低温殺菌」の三つに大別され、一般的に多いのは「超高温殺菌」です。超高温殺菌とよばれる120度~150度で1~3秒間加熱して殺菌する方法は、栄養成分は変わりませんが、タンパク質が加熱の影響を受け、風味は多少変化すると思います。

▼牛乳の殺菌温度
低温殺菌
・低温保持殺菌:生乳を保持式で63~65℃で30分間加熱して殺菌する方法
・連続式低温殺菌:生乳を連続的に65~68℃で30分間加熱して殺菌する方法
高温殺菌
・高温保持殺菌:生乳を75℃以上で15分以上加熱して殺菌する方法
・高温短時間殺菌:生乳を72℃以上で15秒以上加熱して殺菌する方法
超高温殺菌
・超高温瞬間殺菌:生乳を120~150℃で1~3秒間加熱して殺菌する方法。日本の市販の牛乳の9割がこの方法で殺菌されている
・超高温滅菌殺菌:生乳を135~150℃で1~3秒加熱して殺菌する方法

――殺菌方法でそれほど差が出るものでしょうか?

小山 私も以前は、そこまで変わらないのではないかと思っていました。