メジロ本書より

記憶力や集中力、やる気が年々衰えてきた……。しかし、医学博士の瀧靖之氏によれば、そうした脳の能力の低下を抑制するためのトレーニング法は存在し、日々の景色に潜む“野鳥”の観察も効果的だといいます。本稿は瀧氏が監修した『1日2分で脳が若返る! 野鳥のまちがいさがし』(扶桑社ムック)の一部を抜粋・編集したものです。

高齢者でも
脳の機能を高められる

 今、日本は世界一の長寿国となり、65歳以上の高齢者は3000万人を超えています。しかし、ただ長生きするのではなく、年齢を重ねても脳が健康でなければ、自立した生活は送れません。

 これまで私は子どもからお年寄りまでたくさんの方々の脳のMRI画像を見てきました。その数は約16万人にもなります。

 脳のMRI画像というのは、その人の生活習慣など、人生の履歴が見えてきたりもします。例えば70代の方でも生活習慣に気をつけられて、身だしなみにも気を配っておられる方の脳のMRI画像を見ると、萎縮が少なく、50代から60代の脳にしか見えないほど若々しいことがあったり、逆に若い方でも生活習慣が乱れて身なりにもかまわず老けこんでいる方は脳に萎縮が見られ、老化が進んでいる場合があります。

 今まで脳は大人になるともう成長することなく、衰えていくだけだと思われていました。しかし、いくつになっても脳は、その機能を高めることができることが最近の研究からわかってきました。

 例えば、少しでも脳を変化させる生活習慣やトレーニングを試みると、高齢の方でも脳の機能が高められます。何歳から始めても必ず変化が起きて脳は活性化するので、脳にいい変化を促す生活習慣をいろいろ取り入れることが認知症などの予防にもつながっていくのではないかということです。

面白いと思うことや達成感が
認知機能を活性化

 本稿では野鳥の写真を使ったまちがいさがしを紹介します。もともとまちがいさがしは脳の活性化を促す遊びといわれています。

 まちがいさがしでは、1枚の写真を見て記憶し、別の写真を見て目の前の写真と「自分の記憶の中にある」写真を比べます。この場合の記憶が短期記憶と呼ばれるもので、そして「ワーキングメモリ(作業記憶)」を働かせて「違いを判断」し、認識します。

 ワーキングメモリは、人が何かの作業(ワーキング)に取り組む際に役立つ情報を一時的に保持(メモリ)しておく、いわば脳のメモ帳です。

図表:脳がよみがえる!まちがいさがしの効果本書より 拡大画像表示