【毒親は標的を選ぶ】「できのいい姉」と「できが悪い妹」、実母が介護離職に追い込んだのはどっち?写真はイメージです Photo:PIXTA

家族の介護を理由に仕事を辞める「介護離職」が社会問題になっている。厚生労働省によるとその数は22年で約10万6000万人。「仕事を辞めてまで親の介護に専念することはお勧めしません」と言うのは30年近く家族介護の現場を取材してきた介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん。中には親の介護のために仕事だけでなく結婚まであきらめた女性もいるという。子どもの人生を犠牲にしてしまう介護毒親の実態とは?(取材・文/ジャーナリスト 村田くみ)

娘を介護離職させた毒母が
「絶対に言わなかったこと」

 介護離職には「仕事と介護の両立が難しい職場だった」「(子ども自身が)介護をするなかで体調を崩した」というケースがよくある。

 本来、介護サービスや会社の支援制度を利用すれば回避できたはずの介護離職に後から気がつき、再就職ができないまま親の年金をアテにして生活せざるを得ない人も多いという。

「親たちは『自分の介護のことで子どもたちに迷惑をかけたくない』と言いつつも、必要以上に子どもに依存してくる親も一定数います。なかには親の介護のために仕事だけでなく結婚まであきらめてしまった娘さんもいました。介護サービスや会社の制度を使えば両立ができたかもしれない状況だったのに、親に依存されてしまったのです」(太田さん)

 特に相性がよいとはいえない親子の場合は精神的に追い込まれるという。関東地方に住むC子さん(40代)もその一人。会社を辞めただけではなく結婚もあきらめてしまったままアラフィフになってしまった。

「C子さんは短大卒業後、地元で就職しました。元々一人暮らしをしていましたが、30代の終わりにお父さん(70代)が脳卒中で倒れたことがきっかけで実家に戻り、そのまま会社を辞めてしまったのです。お父さんは要介護3で寝たきりの状態ではなかったのですが、1人でトイレに行くのが困難でサポートが必要でした。お母さん(70代)は『1人で介護するのはキツイ』と訴えてきたそうです」

 正社員になって勤続年数が15年を過ぎれば、立派なキャリアだ。仕事上で得た人脈、スキルは豊富で、そう簡単に仕事を手放せられないと多くの人が思うだろう。しかし、C子さんは違った。