「無能な上司の机の上にこっそり置いておきたい本だ」
という感想が届いているのは、安藤広大氏の著書『リーダーの仮面』である。これまで4400社以上の導入実績があるマネジメント法の「識学」をもとに、部下の育成や日々の管理業務などで悩むリーダーたちにチームの仕事がうまくいくための「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のビジネススキルを解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
「優秀なプレーヤー」が
「優秀なリーダー」になるわけではない
会社のマネジメントは、“リーダーの言動”ですべて決まります。
この記事を読んでいるあなたはきっと「プレーヤー」として優秀な人でしょう。
そして、優秀なプレーヤーは、出世をして管理職(リーダー、マネジャー)になります。
ただ、“優秀なプレーヤー”が必ずしも「優秀なリーダー」になるとは限りません。
1人の部下を目の前にしたとき、先輩として、上司として、リーダーにはたくさんのことが見えるはずです。
仕事のやり方、スキルアップ、コミュニケーションの取り方、段取り、ビジネスマナー、チームワーク、資料作成、やりがい、モチベーション、売上、目標、家族、プライベート、健康管理、ビジョン、夢……
それらのことを考えてしまって、リーダーは、つい、その場の「思いつき」で何かを言いたくなるものです。
しかし、チームの結果を最大化させるために、リーダーが見るべきポイントは、たったの5つなのです。
リーダーが何を言うか。そして、何を言わないか。いいリーダーの言葉は、「時間差」で遅れて効いてきます。
ちょっとした考え方を身につけ、
頭を切り替えるだけでよい
まずは、「5つのポイント」にフォーカスし、それ以外のことは任せる。見守る。待つ。スルーする。
それを可能にする思考法として、「リーダーの仮面」という方法があります。
初めて部下やスタッフを持つようなタイミングは、人生において非常に大事な時期と言えます。
なぜなら、社会人になって以降、プレーヤーとして自分のことだけで一生懸命だった時期が終わり、初めて「他人の人生」のことや「将来のキャリア」について考えるタイミングだからです。
その後も出世し続けたり、あるいは独立や起業をするにしても、最初の「部下との接し方」がマネジャーのキャリアの原点になります。
その第一歩めにおいて、リーダーとしての「仮面」をかぶれるかどうかで、その後の人生で「大きな差」が開いていきます。
まず、若手リーダーに知ってもらいたいことは、「プレーヤーとして優秀だった人であればあるほど、リーダーとして失敗するリスクを抱えている」ということです。
リーダーの失敗は、大きく分けて2つのパターンがあります。
ひとつは、細かく指導しなければと思い、「もっとこうすれば?」「じゃあこうしてみようか?」と、手取り足取り指導する人。
もうひとつは、「俺の背中を見て覚えろ」と言わんばかりに自分がプレーヤーを続け、部下についてこさせようとする人。
どちらもダメなパターンです。
前者は優しくていいリーダーに見えますが、メンバーが思考停止し、成長しません。
後者も、できるリーダーのように思えますが、実はリーダーとしての責任を放棄し、役割を果たしていません。
部下やスタッフを持つと、これまでの仕事の延長ではなくなり、「まったく別次元の能力」が必要になるのです。
それが、「マネジメント能力」です。
では、あなたが持つ「リーダー像」とは、どんなものでしょうか。
人によっては、天性の才能で、リーダーシップを発揮できる人がいます。幼少の頃から学校生活で磨かれた「人間的な魅力」と言っていいでしょう。
それ以外の人は、マネジメントは諦めるべきでしょうか。
あるいは、今からリーダータイプに性格を変えるべきでしょうか。
その必要はありません。
ちょっとした考え方を身につけ、頭を切り替えるだけでよいのです。
それだけで、元々リーダータイプだった人を超える「いいリーダー」にもなれます。
その方法として、「リーダーの仮面」をかぶり、与えられた役割を徹するようにしましょう。
(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年7月現在、約4400社の導入実績がある。主な著書にシリーズ累計140万部を突破した『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』(いずれもダイヤモンド社)がある。