不倫や浮気はなぜ
人の胸を躍らせるのか

 不倫や浮気は性質上、情熱だけでなく、パートナーに対する裏切り、嘘、隠し事も含む。実際、隠蔽は不倫や浮気の基本的な要素、基本原則の1つと見なすことができる。浮気は常に正式なパートナーシップである交際、婚姻と隣り合わせで、その陰に存在するからだ。秘密は常に存在するし、多くの場合、その秘密が性的関心の火種となる。

書影『不倫の心理学』(新潮社)『不倫の心理学』(新潮社)
アンジェラ・アオラ著、安達七佳訳

 秘密は胸を躍らせるものだ。自分だけの部屋のようなもので、退屈な日常や予測可能な人間関係の中で憩いの場となる。自分だけの秘密は解放感とパワーを感じさせてくれる。反骨心を抱かせると共に、自分自身でルールを決めることが自立心や規律を与えてくれる。仕事でも社会でも家庭でも、要求や期待、ルールがあるが、浮気に関しては“誰からも指図を受けない”のだ。

 オーランドでのスポーツ休みは終わりに近づいていた。最初の頃はネットで見つけた写真に取り憑かれていたが、すぐに1枚も見たくなくなった。好奇心がピークに達すると嫌悪感に変わった。なんてひどい仕打ちなんだろう。

 彼女のプロフィールをもう一度開いてみたが非公開になっていた。よかった。もう何も見られなくなり、子供たちが父親のキス写真を見つけることもない。時がたてば子供たちは父親の新しい恋人を知ることになる。だとしてもSNSではなく、他に適切な方法があるはずだった。