改めて説明すると、この調査は通勤通学時間帯における鉄道の混雑状況を把握するため、毎年度実施されているもの。混雑率は、「輸送人員(乗客数)÷輸送力(一編成の定員)」で算出される。最も混み合う時間帯のうち、1時間の平均値。今回は、東京メトロにフォーカスしてランキングを作成した。早速、確認してみよう。

東京メトロの“痛勤”ラッシュ王は日比谷線!
なぜ乗客が激増?ヒントは「乗り換えの流れ」

 23年度の東京メトロ混雑率ランキング、第1位(ワースト1)は、日比谷線だった。19年度を4%上回る162%を記録し、東京メトロの路線の中で最も高い混雑率となった。

 日比谷線は、ピーク時の利用者が21年度2万人、22年度3.7万人、23年度は4.5万人と大きく伸びており、混雑率、利用者数共にコロナ禍前の水準を越えている。なぜだろうか?

 日比谷線での最混雑区間は、「三ノ輪→入谷」だ。ここで注目してほしいのが、ランキング第2位の千代田線「町家→西日暮里」である。一方で、首都圏の北エリアの交通の要衝である北千住駅には、筑波・八潮方面からのつくばエクスプレスと、茨城県側からのJR常磐線が乗り入れ、東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)は日比谷線に直通する。この北千住駅を挟んで、「JR・つくばエクスプレス→地下鉄へ乗り換え、東武は日比谷線直通」という通勤の大きな流れがあるだろう。

 乗り換えや直通運転を受け止める千代田線と日比谷線のうち、ピーク時の1時間あたりの利用者は千代田線の方が圧倒的に多い(千代田線は6.6万人、日比谷線は4.5万人)。しかし、日比谷線は1964年の東京オリンピック開催時に開業したため、全体的にコンパクトに設計されており、輸送力は千代田線の6割ほどしかない。他社からの乗り換えを含む急激な乗客の増加と、昔からの輸送力不足が重なり、日比谷線の混雑率が急激に上がったと思われる。なお、千代田線も前年比で乗客が急増し(6.1万人→6.6万人)、混雑率も139%から150%に上昇している。

 新たに「東京メトロの最混雑路線」となった日比谷線だが、新型車両(13000系など)への置き換えを完了したものの、編成定員はほぼ変わらない。ホームや駅の拡張が難しく、混雑緩和への抜本的な対策を持っていないと見受けられる。株式上場後に、新たな混雑緩和策が出てくるのか、要注目だ。