JR東海Photo:PIXTA

JR東海が、「水素」でENEOS、日立製作所と連携すると発表した。取材を進めると、JR東海ならではの悩みや、ENEOSが描く青写真も見えてくる。一方、JR東海関係者からは、「国内外で事例のない技術開発にも挑戦する」との回答が得られた。「実現すれば世界初」となる車両の開発方針も含めて、鉄道×水素の将来像とプレーヤー勢力図を展望する。(乗り物ライター 宮武和多哉)

JR東海×ENEOS×日立製作所
「水素」の安定供給網は実現するか

「鉄道車両は、どんなエネルギーを使って走っていますか?」という問いに対して、現状の答えは「電気」と「石油」である。それに加えて、今後は「水素」が増えていきそうだ。

 5月、JR東海は、安定した水素供給網の確保を目的に、ENEOSと日立製作所と連携する基本合意書の締結を発表した。水素ガスと酸素の化学反応によって動くモビリティは、石油や軽油で動くそれに比べて環境性能が抜群に良く、2024年現在で自家用車やバス(トヨタ「MIRAI」「SORA」)、船舶(関門海峡で運航中の「HANARIA」)などが実用化に至っている。

 一方、鉄道ではJR東日本が水素ガスと蓄電池を組み合わせたハイブリッド車両「HYBARI」(FV-E991系)を運行しているが、走行距離は長くて20kmほどしかない(南武線・登戸駅~尻手駅~浜川崎駅間など)。長距離を走行し、大人数を乗せる場合、相応かつ多量の水素が必要となる。

 しかし現状では、輸入や国内生産でまかなえる水素は少なく、安定した市場もサプライチェーンも構築されていない。そこでJR東海は、水素の安定供給先としてENEOSを、運搬や管理設備にノウハウがある日立をパートナーにし、サプライチェーンを築いていくという。

 話を深掘りすると、JR東海ならではの悩みや、ENEOSが描く青写真も見えてくる。JR東海の関係者が明かした、「実現すれば世界初」となる燃料電池(FCV)を使わない水素動力車両の開発方針も含めて、鉄道×水素の将来像とプレーヤー勢力図を展望する。

図表:JR東海が発表した3社連携のプレスリリースJR東海が発表した3社連携のプレスリリース 拡大画像表示