今や日本はIT技術では完全に米国に後れを取り、GDPベースでは中国だけでなくドイツにも抜かれるなどの凋落ぶりを示しています。僕はこのように日本の産業が衰退し、経済が落ち込んだ原因は、政治家と官僚にあると思っています。

 そもそも政治家や官僚が新しい産業を作り出そうとしても、うまくいくわけがありません。なぜなら政治家も官僚もビジネスマンではないからです。

 結局、官僚に新しい産業を作らせようとすると、クールジャパンのように、そこら中にお金をばらまいただけで、何も新しい文化が生まれなかったということになってしまいます。

 クールジャパンは日本独自のコンテンツであるアニメや漫画、ファッション、食品などを、世界の市場に向けて発信するというものでした。しかしそれらのコンテンツが海外のどんな商圏で取引されるのかというリサーチが十分になされておらず、さらには運営機構自体が、肝心の日本のアニメやファッションなどについて理解していませんでした。結果的には356億円という巨額の累積赤字を出してプロジェクトは大失敗に終わりました。

政治家と官僚が無能なのは
過去を振り返れば一目瞭然

 このように、産業に関してはドシロウトであるにもかかわらず、残念ながら政治家も官僚も自分たちが優秀だと思っているので、自分たちなら新しい産業も生み出せると思い込んでいるのです。

 しかし彼らが無能だということは、歴史を見れば一目瞭然です。日本唯一のDRAM(編集部注/半導体メモリの一種)メーカーであったエルピーダメモリを経営破綻させ、NHK主導で進めたアナログハイビジョンは見事に失敗して、世界の潮流はデジタルに移っていきました。

 産業のことは素直に民間に任せておけばいいと思うのですが、IT産業に関してはホリエモンこと堀江貴文氏を逮捕してみたり、日産自動車が利益を出し始めたら、その外国人経営者のゴーンさんを逮捕してみたりと、足を引っ張りまくりです。経済政策を行う際には、必ず政治家と官僚が自分たち主導で事を進めようとするのですが、むしろ何もしないほうが、日本の産業は発展すると思います。