偏差値35から、まさに「リアルドラゴン桜」のような大逆転で東京大学に合格した西岡壱誠さん。
近年では、TBS系日曜劇場「ドラゴン桜」の脚本監修やフジテレビ「さんまの東大方程式」への出演、小倉優子さんへの受験サポートでも注目を集め、近著『「思考」が整う東大ノート。』も話題です。
大活躍している西岡さんですが、そうした活動の中で、大学受験を控える子どもの親御さんから、さまざまな意見が届くといいます。
本記事では、西岡さんに「東大に行けるという“勘違い”」について、話を聞きました。
『ドラゴン桜』のような大逆転はただの夢?
僕は、偏差値35から東京大学に合格し、東大を目指す漫画『ドラゴン桜2』の編集担当と、ドラマ日曜劇場「ドラゴン桜」の東大監修をさせていただいた人間です。
その中で多くの人から、漫画やドラマに関する感想や意見をいただく機会がありました。ポジティブな意見を伝えてくださる方もいれば、ネガティブな意見を伝える方もいました。
そんな中に、こんな意見がありました。
「うちの息子が、『ドラゴン桜』を見て、東大に行けるなんて勘違いをしている。どうしてくれるんだ!」
要するに、親御さんが、東大を目指せる学力にない自分の子どもがドラゴン桜に触発されて東大志望になったことを怒っているご連絡だったわけです。
「東大に行ける」という勘違い
みなさんはこの意見、どう思うでしょうか? この意見、別に間違っているわけではないと思います。東大を目指して勉強しても報われない人もいるでしょうし、運悪く落ちてしまう人もいるでしょう。
でも、僕はこの意見を読んだときに、「親御さんがそれを口にするのはどうなんだろうか」と思いました。「自分の子どもは、東大に行けない」と決め付けていないとこの意見は出てこないですよね。
東大に入ってみると、意外と「リアルドラゴン桜」と呼ぶにふさわしい人というのはいます。名門と呼ばれる中学校、高校に行っていなかった人でも、偏差値が低いところから東大に受かった人も、週3のバイトをしながら東大に受かった苦学生も、30歳から東大受験して受かった人もいます。
先日「さんまの東大方程式」という番組で取材していただきましたが、僕はそういう人たちを集めて、現在「カルペ・ディエム」という会社をつくっています。そして、そこには30人ほどの東大生が集まってきています。
そういう東大生たちも、「目指そう」と思い始める前の段階で他の大人が見たら、「東大に行けるという勘違いをしている人」だと言われていたと思います。実際、僕だってまわりの友達からも大人からも馬鹿にされていた記憶があります。「お前が東大行けるわけねえじゃん!」と。
まわりから「勘違い」と言われて、それでも東大に行く人たちだっているのです。
「勘違い」が原動力になる
ちなみに僕は、この「勘違い」に対する意見に対して、結構長いこと落ち込んでいました。自分のやっていることは間違っているんだろうか、と。でも、そんなときにある学校の先生からこんなことを言ってもらったことがあります。
「いやいや、勘違いでもいいんですよ。たとえば、自分の学校は偏差値がすごく低くて、小学校中学校、自分で勉強なんかほとんどしたことがない生徒しかいません。でも、そんな子たちが、ドラゴン桜を見て『俺も東大に行くんだ!』って勉強してるんです。正直、合格できないとは思います。けど、それでも今までにないくらい、一生懸命勉強しているんですよ。だから西岡さん、彼らにいい勘違いさせてくれて、ありがとうございます。」
「勘違いさせてくれてありがとう」という言葉は、自分の胸にすごく刺さった記憶があります。「ああ、そうか。別に勘違いだったとしても、その勘違いが他の人にいい影響を与えていることもあるのか」と。
もしかしたら『ドラゴン桜』を観て勉強する気になった人たちは、結果的に不合格になってしまうかもしれない。でも、その夢を見て努力することが、無駄になることはないはずなのです。
それに、そうやって勘違いして勉強したら、それが勘違いじゃなくなることもあるかもしれない。だから僕は、これからも「勘違い」をさせる活動をしていこうと思います。
1996年生まれ。東京都出身。
偏差値35から東京大学を目指すも、現役・1浪と、2年連続で不合格。
崖っぷちの状況で開発した「暗記術」「読書術」「作文術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大(文科二類)合格を果たす。
そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。
全国20校以上の中学校と高校で学生たちに思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。
また、YouTubeチャンネル「ドラゴン桜チャンネル」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。
著書はシリーズ累計40万部突破の『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』(東洋経済新報社)ほか多数。
TBS系日曜劇場『ドラゴン桜』脚本監修。