「暴走族」が「珍走団」と言い換えられたり、最近ではイギリスで暴動を煽るデマをネット上で拡散した人々に「キーボード戦士」という最高にダサいネーミングが与えられたりしていた。一方、「地面師」は作品のタイトルにそのまま採用されるほどである。

社内で怪しんだ人もいた
「積水ハウス地面師詐欺事件」

 それはさておき、「積水ハウス地面師詐欺事件」では、東京・西五反田にあった約600坪の土地を巡って、同社が55億5000万円を盗み取られた。地面師は、土地所有者の女性になりすました女を使い、同社の担当者を欺いた。この後、別会社が正式に土地を取得し、開発を行っている。

 地面師が土地の持ち主になりすました人物を立てたり、その身分証明書などを偽造したりする手口は昔から知られており、対策も取られている。

 ドラマの中では立ち会った司法書士が、名前や生年月日、干支だけではなく、周辺でよく使うスーパーまで尋ねる場面が出てくる。地面師側に感情移入している視聴者をハラハラさせる場面なのだが、実際にこのような確認は行われる。近所の住民など知人を通じての本人確認も行われる。

 地面師は地面師で、なりすましに会わせる回数を極力少なくしたり、土地所有者は気難しい人物だと思わせることで質問しづらい雰囲気を作ったりする。

 積水ハウス事件の場合、怪しいと感じて話に乗らなかった不動産会社が複数あった。さらに、社内でも不審に感じていた社員はいたようである。しかし、実際の土地所有者から「売買契約はしていない」と記載された内容証明郵便が届いたにも関わらず、怪文書として処理してしまう。

 土地売買を妨害するための「怪文書」だと思い込んでしまったのだという。ドラマの中でも、「石洋ハウス」の担当者が内容証明郵便を地面師に突きつけるが、地面師がよくある妨害工作だと一蹴する場面がある。