だが、同時に描かれるのが騙される側の悲惨さである。
彼らの多くは欲に駆られたあまり騙されるので滑稽にも見えるのだが、しかし前述した青柳のように、彼らも彼らなりにビジネスの戦場を生き抜こうとした上での選ばざるを得ない選択肢がそこにあったのだ。ある者は経営者としてその賭けに乗ろうとし、ある者は社内政治で負けるわけにはいかず、同僚の警告を軽んじてしまう。
彼らに共通するのは、慎重に相手を見極めるよりも、「信じたい」気持ちが勝ってしまうことなのだろう。自分の成功を信じたいから、相手を信じ込もうとし、相手の不自然さに目をつむり、信用できそうな部分を探し出してしまう。
「違うって言ってくれ!」
あなたはもう地面師の手の内に
ここから学ぶべきことは、自分のマインドセットである。いま、自分が何を信じたいと思っているのかを冷静に分析し、それを差し引いてから、目の前にある事情を客観的に捉え直さなければならない。
実際の地面師たちはドラマの中の地面師よりも手口が荒く、本人確認の際に生年月日が言えない「なりすまし」がいたこともあるのだという。そこまで怪しい状況が目の前にあっても、騙されるときは騙される。
ドラマの中で、騙されたことに気づいた被害者が、それでも認められず「違うって言ってくれよ」と言いながら退場するシーンがある。これまで驕り高ぶってきた人物とはいえ、あまりにも哀れで、見ている側にもその絶望が強く刻まれる。人を陥れる地面師はやはり悪であるからこそ、悪の前で隙を見せてはならない。