日本人が嫌がるアメリカ人の「アルファベット3文字」の質問、どうやって返すのが正解?写真はイメージです Photo:PIXTA

生意気、出しゃばりにしか思えないアメリカ人部下の「なぜ?」から始まる質問。駐在員・山田部門長のケーススタディーから、外国人とうまく付き合うポイントを理解しよう。(パタプライングリッシュ教材開発者 松尾光治)

アメリカ人の若手トムに
山田部門長がブチ切れた!

 アメリカに赴任してアメリカ人の部下を持った日本企業の駐在員が必ずと言っていいほど困惑させられるのは、部下がことあるごとに発する「なぜ?」「どうして?」という質問だ。

 例えば、こんな状況での会話を想像してみてほしい。トム(34才)は日系企業に転職して3カ月目。日本人の若手駐在員とペアで営業を行なっている。そのトムに、部門長として赴任してきたばかりの山田が声をかける。

山田:Tom, you were 20 minutes late today.
トム、今日は20分遅刻したね。

トム:Well, there was a big accident on Route 101, and the traffic was terrible. So, I tried to take Route 280, heading south on 101….
それが、ルート101で大きな事故があり渋滞がひどかったので、ルート280を通って101号線の南方面へ向かうことにしました...。

山田:You don’t need to make excuses. Just apologize.
言い訳はしなくていいよ。謝ってくれればいい。

トム:(遅刻した原因を説明をしたつもりが、言い訳扱いされたことに驚く) Why should I apologize? I haven't finished explaining yet.
どうして謝るんですか? まだ説明が終わっていません。

山田:No need to explain. You must arrive at work before 9:00 am. Period.
説明はいいよ。午前9時前に職場に到着すること。以上。

トム:But why? Why do we need to adhere to the start time so strictly?
でも、なぜですか? なぜ、始業時間をそんなに厳守しなければならないのですか?

山田:(唖然としながら) Wh-why? Because it’s the rule. You’ve seen it in the Employee Handbook, right?
な、なぜって。それがルールなんだから。「従業員ハンドブック」にも書いてあるだろう?

トム:With all due respect, I don’t think strictly adhering to the start time is reasonable. People’s circumstances change daily, and we should adapt to situations instead of following a general rule blindly.
お言葉ですが、始業時間厳守というのは合理的でないと思います。人の状況は日々変わりますし、一般的なルールに盲目的に従うのではなく状況に適応すべきです。

山田:(得意気に)As you know, Japanese people are known worldwide for their punctuality. Since you work for a Japanese company, I hope you can embrace this good quality.
君も知っているだろうけど、日本人は時間に正確なことで世界的に知られている。日本企業に働く君も、日本人の良いところを取り入れてくれるといいと思ってる。

トム:But I’ve noticed that none of the Japanese employees leave exactly at 5:00 when the workday ends. Why’s that? If the start time must be strictly observed, shouldn’t the end time be as well?
でも、日本人社員の方達は終業時刻の午後5時ぴったりには誰も帰らないのに気付きました。なぜですか? 始業時刻厳守ならば終業時刻も守られるべきではないでしょうか?

山田:W-well, that’s because of the time difference with the headquarters in Japan. And the video conferencing...
そ、それは…日本の本社との時差があるからさ。ビデオ会議が...。

トム:(目を輝かせる)I see. Then, considering the time difference, how about shifting our work hours on days when we have meetings with Japan? I have some experience with this sort of thing in my previous job. I might be able to come up with some good approaches. Can I share them with the team? I'd be happy if it helps everyone.
なるほど、じゃあ時差を考慮して日本と会議のある日は勤務時間をシフトしてはどうでしょう? 前職で似たような経験があるんですよ。良いアプローチをいくつか思い付くかも知れません。チームの一員として皆さんとシェアしてもいいですか?皆さんの参考になれば嬉しいです。

山田:(キレる)That’s not necessary! Just make sure you’re not late!
その必要はない!とにかく遅刻しないように!

トム:(心の声)How did someone like this get to be a manager?
なんでこんな人がマネージャーになれたんだろう?

 山田がキレるのも致し方ない。新入社員が上司に向かってこのようにズケズケ言うことは、日本では普通ないだろう。自分の立場をわきまえない生意気で出しゃばりなやつ、と評価されかねない。

 だが、トムは真剣なのだ。なぜ山田さんが突然キレたのかさっぱり分からない。

 この感覚のズレはどこからくるのだろうか? 誤解のないように付け加えておくと、アメリカ人にも時間をきちんと守る人はいる。一方、日本の感覚からすれば信じられないほどルーズな人もいる。色々いるのが当たり前というのがデフォルトの感覚だ。