8月5日の株価の暴落後、米国株はほぼ下落前の水準を回復し、日本株も下落幅の過半を取り戻した。今後の株価の先行きはどうなるのか。過去の株価暴落時との比較や日米経済の動向を踏まえ、検証する。(ピクテ・ジャパンシニアフェロー 大槻奈那)
8月株価暴落は上がりすぎたものが
売られたパニック相場の典型
8月初頭の日本株の暴落は、今年新NISAを始めた個人投資家から経験が長いアナリストに至るまで、全ての市場関係者にとっても衝撃的なものだった。
パニックぶりを象徴しているのが、下の図表1だ。
年初から7月末までの騰落率(縦軸)と、7月末から大暴落を記録した8月5日までの業種別の騰落率(横軸)とをプロットしたもので、両者に有意な逆相関がみられることがわかる。
円高でダメージを受ける輸送用機器や機械株も20%を超える下落となったが、最も売られたのは、銀行、保険、証券といった金融関連株だった。とりあえず年初から株価が上昇したものから売られ、また売られた順に戻った印象だ。一方で、本来株価を形成すべき予想増益率や、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などと騰落率には相関がみられない。典型的なパニック相場だったとされるゆえんである。
改めて、8月5日の12.4%という大暴落はなぜ発生したのだろうか。次ページではその要因を分析し、過去の株価暴落時と比較しつつ、今後の株価の先行きを予測する。