
大槻奈那
実物資産(RWA、リアルワールドアセット)のトークン化が米国を中心に急速に進展している。ブロックチェーン技術を活用し、不動産や債券、美術品などをデジタル資産として流通させる仕組みだ。NFTブーム後の冷却を経て、現在は金融実務に根ざした取り組みが加速している。その利点やリスクを検証しながら、トークン化がもたらす新たな金融の地平を展望する。

予測不能な関税戦略を通じて、トランプ米大統領はわずか半年で米国への対内直接投資を急増させた。補助金を伴わずに投資を呼び込む“強硬交渉術”は、各国の誘致戦略を凌駕しつつある。だが、その覇権の持続性はどうか。日本の現状や歴史の教訓と照らしながら検証する。

トランプ関税の“相互関税”発表後の混乱は一応落ち着いたものの、米国債市場の先行きは依然不透明だ。トランプ大統領の政策運営への不安が、米国債の信認低下というアキレス腱に突き刺さる。国内外投資家の余力減少や銀行の含み損問題、債務上限問題、そして格下げ懸念。米国債への信認をさらに低下させる材料は山積している。

トランプ政権は銀行への規制緩和を進める。ただ、その動きは米国だけではない。欧州でも規制は緩和の方向にあり、1988年のバーゼル規制以降の規制強化の流れは反転する。一方、資産運用会社などNBFI(いわゆるノンバンク)への規制は厳格化されそうだ。

復権したトランプ米大統領は、就任初日から関税をはじめとする公約実現にまい進している。政府のスリム化、減税、金融規制の緩和なども今後進められていくだろう。こうしたトランプ2.0に死角はないのか。リスク要因を検証する。

ビットコインをはじめとする暗号資産の価格が高騰している。現物ETF(上場投資信託)承認、トランプ氏の米大統領選挙での勝利などこれまでの上昇要因を振り返りつつ、今後の価格動向を予測してみた。

政府はスタートアップ企業を増やし、成長させようと旗を振る。しかし、その数は主要国の中で下位に沈む。それどころか、株式公開後に株価が上がらず利益も伸びない企業が多い。それはなぜなのか。

8月5日の株価の暴落後、米国株はほぼ下落前の水準を回復し、日本株も下落幅の過半を取り戻した。今後の株価の先行きはどうなるのか。過去の株価暴落時との比較や日米経済の動向を踏まえ、検証する。

3月初めから急速に広まった世界的な信用不安は、UBSのクレディ・スイス救済劇を最後に、いったんは沈静化を見せている。不安の伝播を食い止めることに成功した各国当局の対応を賞賛する声もあるが、一方で流動性・資本性の金融規制の在り方や、銀行救済の進め方など多くの課題も露呈した。今後、銀行からの流動性供給が滞れば、救済措置の範囲外となるノンバンクなどを震源地とした新たな金融危機が起こる可能性もゼロではない。

超低金利が継続するなか、利回りを求める資金が、クラウド・ファンディングなどオルタナティブ・ファンディングに向かっている。銀行が消極的な中小企業へのリスクマネー供給を担っている、ただ、情報開示、債権回収など残る課題は少なくない。

日本銀行が「マイナス金利」の導入を発表してからの半月で、邦銀の株価は一時2割以上も下落した。実際には、邦銀にとってマイナス金利の「破壊力」はどの程度なのだろうか。収益への影響と今後の見通しを検証してみたい。

第8回
銀行業界は、競争の激しい成熟産業である。現在のままでは成長シナリオは描けない。しかし、金融緩和と政府の方針で、国内の貸出は増加傾向にあり、海外貸出や手数料収益がこれらの国内収益の回復の遅れを下支えする。
