東京・渋谷に並ぶLimeの着座型キックシート。筐体にはLimeに出社するUberの名称も見える東京・渋谷に並ぶLimeの着座型キックシート。筐体にはLimeに出社するUberの名称も見える 写真:岩本有平

2023年7月の道路交通法(道交法)改正により「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」の区分が設けられて以降、都市部で見かける機会の増えた電動キックボードシェアサービス。日本のスタートアップ、LUUPの独壇場ともいえる市場に、業界大手の米Limeが5年越しの参入をする。(ダイヤモンド・オンライン編集委員 岩本有平)

キックボードシェア大手の「Lime」が日本参入
着座型の“シートボード”を初導入へ

 Limeは8月19日より、東京都渋谷区、新宿区、目黒区、世田谷区、豊島区、中野区の6エリアに、約40のポート(キックボードを設置・乗降するスペース)で計200台の車両を配置してサービスを開始した。提供する車両は立ち乗り型の電動キックボードタイプのほか、着座型の電動シートボードの2種類。着座型の車両については、国内でサービスをリードするスタートアップ、Luup(サービス名は「LUUP」)が今冬からの導入を6月に発表していたが、先行して現場に導入したかたちだ。

 またLimeでは、一般的な電動キックボードと比較して大型の車輪を搭載し、自社の旧型車両より車体の重心を低くした車両を導入し、安定性を高めていると説明する。料金は、基本料金100円に加えて1分ごとに30円を加算する通常プランのほか、490円で1日30分まで乗り放題となる「30分パス」といった定額プランも用意する。

LUUPが今冬導入予定の電動キックシートLUUPが今冬導入予定の電動キックシート(写真中央)

 加えて、ヘルメットを着用した自身の写真を撮影すれば割引料金となるキャンペーンも実施する。電動キックボードは2023年7月の道交法改正により、16歳以上であれば免許不要、ヘルメットの着用は努力義務とした「特定小型原付」という車両区分となっているが、キャンペーンを通じてヘルメットの着用を促すとしている。

 先行するLUUPは、東京をはじめ京都、広島、仙台、福岡など10のエリアでサービスを展開している。ポート数は8200カ所。展開する車両台数は2万台以上。また、地方自治体などとパートナーシップを組んで地方へ進出する「LUUP for Community」と呼ぶプランも本格化させている。都市部ではデファクトスタンダードとなりつつあるサービスに、Limeはどう対抗するのか、注目が集まる。

 Limeは17年に米国で創業。これまで世界31カ国、280都市以上でサービスを展開してきた。ライドシェア大手のUber Technologiesなども同社に出資している。

 実は今回の発表に至るまでも、Limeはコロナ禍以前から日本への参入を狙っていた。当時、日本のパートナーに選んだ企業の1社はKDDIだった。次ページ以降では、当時の状況、そしてKDDIの競合である通信事業者らがMaaS(Mobility as a Service)事業で行った“異例中の異例”の提携、電動キックボードにとどまらない特定小型原付の「本丸」を狙うスタートアップについて報じる。