私は多くのクライアントが失恋を乗り越えるのを助けてきました。別れがこれほどの苦痛をもたらす理由の1つは、人間の脳が喪失に対して過敏であるからです。別れとは劇的な喪失です。あなたが思い描いていたパートナーとの未来の死です。かつてあったもの、いまはもうないもの、これから訪れないものの喪失を嘆き悲しむのです。損失回避傾向のおかげで、なんとしてでも別れを避けようとするのも当然です。

 他方、いい知らせもあります。心理学者のイーライ・フィンケルとポール・イーストウィックが「別れは人が想像するような悪いものではまったくない」こと、どれだけ交際中に幸せなカップルでも、別れによる痛みは予想するほど強くはないことを発見しました。

つらい気持ちは
あくまで一時的なもの

書影『史上最も恋愛が難しい時代に 理想のパートナーと出会う方法』(河出書房新社)『史上最も恋愛が難しい時代に 理想のパートナーと出会う方法』(河出書房新社)
ローガン・ウリー著、寺田早紀訳

 モンマス大学の心理学部の教授で、学部長経験もあるゲイリー・ルワンダウスキーは、人は思っている以上に打たれ強いと指摘します。彼は、恋人と別れてもっとも悲しんでいると思われる人々を調査しました。調査対象は、2、3年以上の長期的な交際を続けた恋人と数カ月前に別れたばかりで、まだ新しいパートナーと出会っていない人たちです。直感的に、かれらの大多数が別れを苦しい体験と見なすだろうと予想されていました。けれどルワンダウスキーらが聞き取り調査をしたところ、破局を否定的に捉えたのはわずか3分の1だけでした。25%は中立的に、41%が肯定的に捉えていたのです。

 つまり月並みな言い方ですが、ものごとにはかならず終わりがくるのです。いまの気持ちは一時的なものです。おかしな身体反応(免疫力の低下と不眠)はいつかなくなり、痛みは消え、このつらい段階を乗り越えられるでしょう。