人は失恋すると、さながら薬物依存者のように元恋人に固執し、心身にダメージを受けるが、その理由の1つとして「人間の脳は喪失に対して過敏」というものがある。うまく失恋から立ち直るにはどうすればいいのか。識者が的確な方法をアドバイスする。本稿は、ローガン・ウリー著、寺田早紀訳『史上最も恋愛が難しい時代に 理想のパートナーと出会う方法』(河出書房新社)の一部を抜粋・編集したものです。
失恋は「損失」ではなく
「利益」と捉えるべし
がんの専門医に自分がなったところを想像してみてください。ある肺がん患者への治療法を決めなくてはなりません。手術と放射線のどちらにするか?手術は長生きする可能性が高いけれど、手術中に亡くなる可能性もあるため、短期的に見るとリスクが高い。
これまでの症例報告を調べると、短期的な生存率は手術が90%、放射線は100%であることがわかります。どちらを選びますか?もし、死亡率が手術は10%、放射線はゼロ%と見せられた場合はどう思いますか?
医学研究者のバーバラ・マクニールは、いまとなっては有名な研究でまさにそのような仮定の選択を医師に迫りました。その研究では、一方の医師グループには生存率を見せ、他方には死亡率を提示しました。
不安に思うかもしれませんが、まったく同じ情報を、伝える方法を変えただけで大きく異なる決断がくだされたのです。生存率の観点から手術を提示すると、84%の医師がその選択肢を選びました。しかし、死亡率の観点から手術を示すと、半分だけがこの治療法を選択したのです。