「世界貿易」の伸び悩みが止まらない…経済グローバル化の失速と保護主義の高まりの脅威Photo:PIXTA

世界貿易の停滞傾向が続く
強まる構造的な下押し圧力

 世界貿易の趨勢的な伸び悩みが続いている。世界各国の財輸入の合計を実質ベース(量)で見ると、コロナ禍による大幅減と反動増という振幅が収まった後は、小幅ながらマイナス基調が続いている(図表1)。

 オックスフォード・エコノミクスは世界の財貿易が24年中に実質で2%程度拡大するとみていたが、見通しの変更を迫られている。各種サーベイ指標から作成する先行指標を見ると、今年中は前年比1%程度のペースでの縮小が続きそうだ。

 世界貿易の停滞には景気循環要因も影響している。特に景気停滞が著しい欧州の不振は、世界貿易に占めるシェアの大きさもあって影響が大きい。その他にも日本やラテン・アメリカや中東の新興国経済の輸入も弱い。内需の停滞が続く中国の輸入も低空飛行を続けている。

 比較的輸入が順調に伸びているのは成長面で独り勝ち状態の米国くらいだ。アジア新興国経済(除く中国)も比較的伸びているが、中国に対する高関税や貿易制限措置を受けた迂回貿易の拡大で漁夫の利を得ている面がある。

 心配なのは、こうした景気循環などの短期的要因だけで趨勢的な世界貿易の停滞を説明できないことだ。世界経済の停滞は、より構造的な要因に依るところが大きく、先行きに暗い影を落としている。