損を出すのが怖くて、株を売ってしまった

 不安そうな顔つきでご相談に来られたのは、会社員のJさん(57)とパートの妻(55)です。「今回の株価の下落により、証券口座に表示される金額がマイナスになってしまった。損を出してしまうのが恐ろしくて、一部売ってしまったが、これでよかったのだろうか」と肩を落としています。

 Jさんは、今年1月のNISAから投資を始めた投資初心者。家計状況は比較的良好で、息子が一人立ちした後の預貯金額が約1100万円。これを投資に移して、老後資金を増やしていきたいと考えました。そこで、ネットを中心に情報収集をして、2024年1月に新しくなったNISAで投資を始めてみることにし、ネット証券の口座を開設しました。

 当初は、インフレ対策になる、銀行に預けるより利回りが良いなど、メリットばかりに目が行き、あまり不安を感じてはいませんでした。様々な記事を読むと、全世界型や米国型の投資信託であれば、リスク分散ができるし、経済成長に乗って資産を増やせることが分かったので、つみたて投資枠でこれらをつみたて投資することから始めました。原資は前述のように預貯金の1100万円ほどです。これを投資にシフトしていけば、効率よく増やせるだろうと、大きく期待していました。

 1年でつみたて投資枠を埋めたかったので、年間120万円積み立てる計画で、毎月10万円を預貯金から投資する設定にしました。1カ月、2カ月経つと、わずかではありますが、銀行に預けているよりは明らかに良い感じで、画面に表示される金額が増えています。