価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

【アイデアを実現するための応援される技術(2)】主人公力があるか?Photo: Adobe Stock

「主人公」は応援されやすい

 アイデアを実現するための応援される技術のもうひとつが、「主人公力」です。「主人公力」というあえて変わった定義をしてみました。どういうことか説明しましょう。

 前回は、漫画『Dr.STONE』の石神千空という主人公を挙げました。

 他にも、ワンピースのルフィであったり、スラムダンクの桜木花道、ドラゴンボールの孫悟空など、読者や視聴者が「作品」を見ているときに、つい応援してしまう主人公には共通する「主人公力」というものがあります。

「主人公力」の6つの要素

「主人公力」は、以下の6つの要素に分解できます。

①夢中力‥応援されなくても勝手にやっている
 目的のために、圧倒的な熱量で取り組んでいること。そして、応援されたくてやるのではなく、応援されようとされなかろうと、勝手にやっていること。見ている側を、その夢に「乗りたい」と思わせるような力。

②IではなくWe‥利他の気持ちがベースにあること
 自分のためにやっていると思わせない。誰かのために、未来のために、行動を起こしていること。

③スピード感がある
 考えているだけでなく、スピード感を持って実行していく。見ている側も、本来だったら自分も行いたいけれど、自分がやれることには限界があるから、スピード感を持って行動をしている人を応援したくなる。

④成長力がある
 目を見張るほどの成長をしていると、そのポテンシャルにかけたくなる。

⑤背景のストーリーがある
 共感できることが、その主人公の背景にあること。わかりやすいのは、ディズニー映画の主人公に多くあるような弱者だった主人公のサクセスストーリーなど。この事業をやるべき動機と結びつくようなストーリーだと強い。

⑥みんなが知っている
 作品なので主人公はみんなが知っていますが、実際は、伝えなければ誰にも知られることはない。「知っていたら応援したのに」などと言われたら不幸なので、知ってほしい人に知られる努力が必要。

 この主人公力は、「応援したくなる企業」やビジネスにおいて「応援される人」にも共通するところがあります。先ほど例に挙げた、Googleやソニーにおいても、この6つは、当てはまるのではないでしょうか。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。