「プリウスが売れるなら売れるはず」と
誰もが思っていたトヨタ「サイ」

 2009年12月に登場した、トヨタ自動車のミドルクラスFF(前輪駆動)セダンである「SAI」(サイ)。2.4Lガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッド専用車として開発され、プリウスの上級版として登場したモデルです。

元日産エンジニアが忖度なしで選ぶ「期待外れのクルマ」、末期は月販500台以下だった「プリウスの上位互換」とは?2009年12月に登場したSAIは、プリウスとクラウンハイブリッドの中間の立ち位置。全長 4695mm×全幅1770mm×全高1485mmのサイズはプリウスよりもひと回り大きく、インテリアも豪華だが、高級車としては少し小振りだった(画像出典情報出典:トヨタ自動車)

 プリウスの上級車種という位置づけの通り、高級車を意識してつくられており、インテリアの質感などはもちろんのこと、カーナビゲーションや6スピーカーのCD・MDプレーヤー付きラジオを標準装備するといった贅沢ぶり。当時のプリウスの売れ筋「S」グレードが車両価格220万円のところ、SAIはベーシック仕様の「S」グレードでも338万円という割高な価格設定でした。

 SAIが登場する半年前(2009年5月)に登場した3代目プリウスが、年間20万台を超える勢いで爆発的ヒットしていたことから、「その上級車であるSAIもヒットは手堅い」と筆者も含む誰もが予想していたはずです。ところが、その結果は惨憺(さんたん)たるものでした。

 価格設定は妥当ではありますが、300万円台を出せるならば「カムリ」などのより立派なセダンも選択肢に入ってきます。また、エクステリアデザインが保守的だったことや「セダン離れ」の影響もあり、登場翌年こそ3万台を記録したものの、その後は低迷。月販500台を下回ることもありました。

 途中でエクステリアデザインを修正したり、ナビの標準装備を取り払った廉価仕様を用意されたりしましたが、時すでに遅し。結局、波に一度も乗ることなく、2017年11月に販売終了となりました。プリウスはあのサイズ、あの価格だからこそ、ヒットしたのかもしれません。