義父が泣くことが問題ではないのだ。問題は、泣いた直後に(それも3秒後ぐらいに)、なにごともなかったかのように普通の状態に戻っているところなのだ。普通というか、むしろ明るい。

「つらいですねえ」「大変ですねえ」と優しく声をかけてもらうなど周囲にいる人間の注目を十二分に集めたことを確認すると、義父はすっかり元気になる。両目はキラキラ輝く。完全復活を遂げ、上機嫌になる。迷惑な不死鳥だ……私の目にはそう見えた。それとも私が意地悪過ぎるだろうか。

 こういう経緯もあって、私はここのところずっと疑っていたのだ。涙声の電話で「もうどうしていいかわからんのや……たすけて……」とダイイングメッセージのようなことを言われても「OKでーす!」と上手にかわしていた。だって、本当は元気なんだもの。

 以前は、驚いて車をぶっ飛ばして夫の実家に駆けつけたものだったが、私の心配をよそに、義父は決まって上機嫌に庭を掃除していた。満面の笑みだ。拍子抜けというか、腹立たしい。こんなゲームをするために私を呼びつけてくれるなという怒りが募ったものだった。