3年入浴できなかった母の悪臭、壮絶介護で平穏な家庭が一変した「些細なきっかけ」とは?壮絶介護の体験談とプロの解説を紹介する(写真はイメージです)  Photo:PIXTA

家族の介護はなぜつらいのか。赤の他人である介護士が上手く世話しているのに、どうして血縁がある自分だと上手くいかないのか。建前ではない当事者の「本音」は、なかなか表に出てこない。しかし、介護では「どう動けばいいのか?」という知識を得て、事前に備えることが肝心だ。そこで今回、ある当事者家族の「壮絶な体験談」を取材し、第一線で活躍するプロに「そのとき、どうすればよかったのか」を解説してもらった。介護される側も、する側も楽になれる「幸せ介護」のヒントを紹介する。(ライター 鳥居りんこ)

「物忘れは老化のせい」
思い込みが招いた家庭崩壊

 関東地方のA市に住む由美さん(仮名・53歳)は一人娘。結婚後は夫である隆さん(仮名・58歳)が由美さんの実家に同居する形で、母親である和子さん(仮名・83歳)と3人で暮らしていた。子宝には恵まれなかったものの、家族仲は悪くなく、いたって平穏な毎日を送っていたそうだ。

 和子さんに最初の異変が現れたのは、今から7年ほど前、2016年のこと。母親の「物忘れ」が多くなってきたように感じた由美さんは知人の勧めで、地域包括支援センター(通称:包括/日本全国どの地域にも存在している介護の公的相談機関)を通して、和子さんの要介護認定を受ける。その時は要支援1という認定の中では一番軽い判定が出たが、和子さんがデイサービスに行くことを拒否したため、介護サービスを使うことなく、さらに要介護認定の更新もしなかったという。

 「今にして思えば、和子さんはあの頃からアルツハイマー病を発症していたのかもしれません」とA市の包括職員であるB子さんが、当時の様子を振り返る。

「元々、和子さんは外に出たがる性格ではなく、どちらかと言えば、人嫌いな面がある方です。毎日、買い物に出かけるような人ならば、同じ物を度々買ってくるなどで、ご家族も異変に気付いたかもしれません。しかし、当時は介護認定も軽かったですし、ご家族は『物忘れは老化のせい』と決めつけて、受診もされなかったようです。当然、介護認定の更新時にお声かけはしたのですが、更新は不要ということで、結果的に包括の手を離れた状態になっていました」 

 再び、包括が支援に乗り出したのが昨年、2022年の秋のことだった。

「由美さんからSOSが入ったんです。『助けてください!』と」

「我関せず」を貫いていた夫の隆さんから「お義母さんより、むしろ君のほうが異常!」と強く言われたために、電話したと由美さんが言ったそうだ。

 連絡を受けた包括の職員達は由美さん宅に急行。B子さんをはじめとしたベテランスタッフ陣は百戦錬磨のプロであったが、あまりの惨状を目の当たりにして、たじろいだという。