女性も気づかない「化学的流産」

 妊娠初期のころには、気づかないうちに流産していることもあります。
「ケミカルアボーション(化学的流産)」といい、一時的に妊娠反応が陽性になりますが、超音波検査で胎のうが見える前に流産してしまいます。

 不妊治療をしている方は、妊娠反応が陽性になるのでとても喜びます。血液検査をするとhCGと呼ばれる、妊娠時に分泌されるホルモンの値が上がっているけれど、胎のうが見えないのでまだ安心できないと知りつつも、女性はパートナーと一緒に喜んでいます。

 しかしその後、hCGの値が下がり、妊娠が成立しないことがあります。ご夫婦はかなり落胆されます。これは多くの場合は受精卵側の染色体異常によるものです。その受精卵はそもそも人間になる力がない、ということなのです。

 私はお二人にこう言います。
「通常の場合でも、生理が遅れたと思っていてじつは流産ということは珍しくありません。今日起こったことは、よくあることなので、とても残念ですが、そんなに気を落とさないでください」
 悲しいことですが、こういうことは稀ではないのです。

高齢出産の増加とともに上がる流産率

 流産とは妊娠22週より前の妊娠中断をいいます。全妊娠の約15%で起こると言われ、連続して3回以上繰り返す場合を「習慣流産」といいます。

 始まりは生理痛に似たおなかの痛みと出血です。
 ほとんどの場合、出血とともに小さなレバーのような塊が出ます。
 すでにお話したとおり、高齢になると卵子の染色体に異常が多くなります。その場合、赤ちゃん自体も染色体異常になりますが、ダウン症以外の染色体異常の多くは流産します。その結果、流産の率は高齢出産の増加とともに上がっているのです。

 不妊治療の増加も、流産が増えている理由の1つです。不妊治療では、ある意味自然では妊娠しないところを人工的に妊娠させるので、不妊治療を行なっている方は、自然妊娠より流産率が高くなります。

 流産をすると妊婦さんは自分を責めてしまいます。でも実際のところ、お母さんの働きすぎや運動のしすぎが原因で流産することは、ほとんどありません。
初期流産の原因はほぼ受精卵側の染色体の問題なので、自分を責める必要はありません。

次回は5月23日更新予定です。


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