前回は、女性が高齢になると体外受精でも妊娠しにくくなることをお伝えした。しかし、妊娠に成功した場合でも、高齢出産にはさまざまな「リスク」が伴うという。今回は、『妊娠・出産・不妊のリアル』でも使用したデータを使い、そのリスクの詳細を解説してもらった。
高齢出産では帝王切開のリスクが上がる
妊娠は基本的に20代から30代半ばまでに起こりやすく、30代後半になるとその可能性は下がっていきます。経産婦さんに関してはっきりした定義はありませんが、35歳以上の初めての妊娠、出産を迎える女性のことを「高齢初産婦」といいます。この「高齢初産婦」、いわゆる「高齢出産」の方がとても増えています。
高齢出産にはさまざまなリスクがともないます。
まず、帝王切開になることが多いと思ってください。
理由はいくつかあります。
1つは、不妊治療等で子宮筋腫などの手術既往がある場合に、子宮破裂など自然分娩で起こる事故を防ぐためです。
私が以前勤務していた地方病院でこんなことがありました。
その方は1回目の出産は帝王切開でしたが、2回目は自然分娩にこだわっていました。病院側は何度も帝王切開をすすめましたが、女性のこだわりが強いので「事故があっても自分で責任をとる」と一筆書いてもらい自然分娩を試みました。
ですが心配した通り、子宮が破裂し、赤ちゃんが亡くなってしまいました。お母さんの救命も大変でしたが、何とか一命は取りとめました。
そして、自己責任と確認しあっていたにもかかわらず、訴訟になってしまいました。
このようなケースが全国で何件かあり、9割方の医療機関では、1回目のお産で帝王切開を受けた人や子宮の手術をしている人は、2回目以降も帝王切開となっています。自然分娩はリスクが高いのです。
2つ目の理由は、高齢出産の場合、妊娠中に血圧が上がったり、糖尿病になりやすいからです。そのために妊娠継続がむずかしくなることがあり、赤ちゃんを守るために帝王切開になることがあります。
3つ目の理由は、後で詳しく述べますが、高齢出産になると、染色体異常や胎児の障害のリスクが高くなります。あまりにも早産の場合や、胎児に重い障害があったり、胎児の状態が悪くて腟から出てくる元気がないときには帝王切開になります。