妊婦の年齢とともに上がる染色体異常の確率
高齢出産では、ダウン症の子が生まれやすいということは、現在ではよく知られています。ダウン症は染色体の異常によって発症するもので、合併症として心臓の病気が起きやすくなります。
妊婦さんの年齢が20歳では約1500人に1人の割合ですが、30歳になると約1000人に1人、35歳だと約400人に1人、40歳では約100人に1人、45歳になると約30人に1人の割合でダウン症の子が生まれます。
妊婦の年齢が高齢ということは、卵子も高齢ということです。卵子が年をとっている分、ダウン症やその他の染色体異常にもかかる率が高いということになります。
ある当直の日のことです。
「先生、赤ちゃんが生まれてしまいました」
と男性が飛び込んできました。
妊婦さんの陣痛が始まり、パートナーの男性が自家用車を運転して病院に連れてきたのですが、到着寸前に生まれてしまったと言います。
私は「おかしい!?」と思いました。
通常、初産の人は陣痛がきても簡単には生まれないはずです。急いで駐車場まで走っていって車のドアを開けると、後部座席が血まみれになっていました。赤ちゃんを抱き上げ、顔を見ると耳の位置が低く、ダウン症特有の顔をしていました。
おそらく、この子はダウン症だから早く生まれたのです。染色体異常の子は早産になりやすく、陣痛がきてから出てくるまでの時間が短いという傾向があります。
「トリソミー」と呼ばれる染色体異常にはダウン症以外のものもあるのですが、赤ちゃんにダウン症以外のトリソミーがある場合は、ほとんど短命になってしまいます。だからこそ、無事に生まれたからには、この赤ちゃんが周囲の愛情をいっぱい受けて、幸せな人生を送ってくれることを心から願っています。