「ユニクロvs文春」の裏事情、柳井氏が狙った“口封じ裁判”という卑劣な手口Photo:JIJI

ユニクロ、アマゾン、ヤマト運輸、佐川急便からトランプ信者の団体まで――。数々の組織に潜入することで、世に知られていない実情を掘り起こしてきた「潜入記者」が、名誉棄損裁判でユニクロに完勝した経緯を初告白!証言台でのやりとりまで詳細に、嘘偽りなく明かす。【前中後編の後編】(ジャーナリスト 横田増生)

>>前編『ユニクロが文春に「2億円訴訟」を起こした理由、潜入記者が語る裁判の全貌』から読む
>>中編『ユニクロが自ら「ブラック企業」認定?文春裁判で“まさか”の敗訴』から読む

なぜ柳井社長は訴訟に打って出たのか

 裁判が継続する間、私の胸に居座り続けた疑問は、いったいどれだけ本気で、ユニクロは裁判に取り組んでいるのだろうか、という点だった。本当に裁判で勝つつもりはあるのか、と。

 私が1年かけて取材してつかんだ長時間労働の実態を、ユニクロが全然知らないことがあり得るのか。それとも、強気の態度に出ることで、不都合な真実を封印しようとしているのか。

 事実は後者であったようだ。

 裁判後、柳井の側近が私に、訴訟を起こす前の様子をこう話してくれた。

「裁判はやめるよう、柳井社長に進言しました。柳井社長が思っているほど、現場の労働環境はホワイトではありませんよ、と。書籍で指摘されているような長時間労働は、全体の店舗の3割前後で存在します」

 社内は訴訟と見送りの間で揺れたが、最後は柳井の判断で訴訟に踏み切った。

 社内で長時間労働が横行しているのなら、なぜ柳井は訴訟に打って出たのか。