パートナーから「今日何食べたい?」と聞かれたら何と答えますか?「何でもいいよ!」と答えていませんか?
「こんななにげないやりとりで頭の良さは露呈するんです」
そう語るのは、2023年と2024年上半期ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)となり、「もっと早く読んでいればと後悔すらした」「ぶっ刺さりすぎて声出た」と反響を呼び続けている『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏。今回は、何気ないやり取りで頭のよさが露呈するワケを聞いた。(構成/ダイヤモンド社・淡路勇介、菱沼美咲)

【「どっちの服がいい?」「今日なに食べたい?」】普通の人は「どっちも似合うよ!」「なんでもいいよ!」と答える。では、頭のいい人は?Photo: Adobe Stock

「今日なに食べたい?」に対するたったひとつの正解

――知人から、「奥さんに『なに食べたい?』と聞かれて、『なんでもいいよ』と答えたら不機嫌になった」という話を聞きました。「なにげないやりとりで頭の良さは露呈する」と安達さんは以前にもおっしゃっていましたが、「今日なに食べたい?」に対して何と答えたらいいんでしょうか?

安達裕哉氏(以下、安達氏) ポイントは、思考コストです。

――思考コスト?

安達氏 はい、思考コストというのは、考えるコストのことです。考えるという行為には、労力がかかります。この場合、「何でもいいよ!」という返答は、一見、良さそうに思えます。しかし、「自由に献立を考える」という考えるコストが発生するんです。

 もし奥さんが、料理が好きで、献立を考えるのが好きなら、「何でもいいよ!」という返答でも機嫌は悪くならないでしょう。でも奥さんの機嫌が悪くなったということは、献立を考えることに負荷を感じているはずです。「何でももいいよ!」という回答は、「全部あなたが考えてね!」と思考コストを相手に押し付けていることになるんです。

――なるほど、たしかに、いくら料理が好きでも、毎日献立を考えるのって大変ですもんね。

安達氏 そうなんです。毎日毎日献立を考えるコストを理解せず、いつも「何でもいいよ!」と答えていたら、相手に相当負荷を与えている可能性が高いです。

――では、「これ食べたい!」と指定するのがいいのでしょうか?

安達氏 実際それも難しかったりしますよね(笑)

――そうなんです(笑)。本当に食べたいもの言っても作れるか分からないし、食べたいものがないこともあります。

安達氏 素直に食べたいもの言って、機嫌悪くなるパターンもありますからね(笑)

――ありますね!難しい!

安達氏 ポイントは一緒に考えてあげること。たとえば、家にいるときに聞かれたなら、「冷蔵庫に何あったっけ?」と冷蔵庫のところに行って一緒に冷蔵庫の中身を確認するだけでも、思考コストを一部負担していることになります。

――なるほど、冷蔵庫にあるもの見て、食べたいものを言ってもいいんですか?

安達氏 もちろん。冷蔵庫の中にあるもので考えるら、この食材がない!とならないでしょう。でも、理想は「じゃあ、僕が作るよ」でしょうけど(笑)。

――たしかにそうですね(笑)。ちなみに、外にいて、ラインなどで「今日何食べたい?」と聞かれた場合はどうですか?

安達氏 「ランチは中華だった!」と伝えるだけでも、「じゃあ、中華以外にしよう」と考えることができます。自由に考えるってコストが高いので、選択肢を減らすだけでも、労力は減るんです。なので、「何でもいいよ!」より「ランチに中華食べたから、中華以外だと嬉しいな」の方がいいですね。

 これは仕事に関してもそうなんですけど、良かれと思っても相手に全部お任せする答えだと不快にさせてしまうことってあるんですよ。考えることを放棄していると思われてしまう。そうすると相手は、コミュニケーションをとる意味を見出せなくなってしまう。

「ちゃんと考えてくれている人」になれているか

――他にも頭の良さが出る場面はありますか?

安達氏 デートで相手から「どっちの服がいいと思う?」と聞かれるシーンですかね。自分がよいと思った服を答えることや、「どっちも似合っているよ!」と答えてしまうと、相手は「自分のことをちゃんと考えてくれていない」と感じてしまいます。正解の答えは、「それぞれどこがいいと思ったの?」です。こう答えることで、相手は「一緒に考えてくれている」と感じます。

 この話は私が執筆した『頭のいい人が話す前に考えていること』の中でもふれています。以前、男子高校生が書店で本を手にしながら「たしかに、こう答えれば一緒に考えていることが伝わりそう、今度使ってみよう」と話をしている光景を目にしました。実は、ビジネスマンだけでなく学生でも使えるコミュニケーション方法なんです。これは、プライベートでも仕事でも、「この人、私のことちゃんと考えてくれている」と感じる人が信頼されるからなんですね。

――ビジネスシーンだけでなく、プライベートでも活用できることが多そうですね!

安達氏 コンサルで教わった「相手のことを考える」コミュニケーションは、「どっちの服がいいと思う?」「今日なに食べたい?」といった何気ない日常の場面でも活きることが多いと感じています。これはビジネスでも、友人関係でも、恋人関係でも、信頼を得ることがよい関係を築くベースになっているからです。ぜひ活用してみてください。

(本稿は、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏へのインタビューをもとに構成したものです)