そして音と拮抗していくヴォーカルは、流麗なメロディを歌うのではなく、叫ぶ、吠える、うなる――シンプルかつ往々にして過激な内容の歌詞に宿った「激情」にかられて、先へ先へとつんのめっていく。あらゆる強迫観念に急きたてられているかのように……といったところが、パンク・ロックのざっくりした全体像だ。「砕かれたガラス瓶や、錆びついたカミソリの刃のような音」だと言われることもある(セックス・ピストルズ)。
すっかり世に定着した
パンク・ファッション
そうしたパンク・ロックの精神性については、先鋭的で、潔癖症的で、妥協のない姿勢がよく指摘される。そんな内面がストレートに反映された結果、「新しい」感触を持つロック音楽となって、当時大きな注目を集めた。最初はニューヨークで誕生し、直後ロンドンで大きく花開いた。そして、すぐに散った――のだが、しかしそのビッグ・バンは、その後のロック界のみならず、現代文化の隅々にまで、ぬぐい去りがたい巨大な影響を残している。