だから僕は、これはすごくユニークなことだと思う。なぜならば、数あるロックのサブジャンル名称のなかで、たとえば日常語としてここまで日本で広まったものなど、ほかにないからだ(「スワンプな奴」「ガレージな発言」なんて、まず言わない)。

 音楽シーン、音楽ファンの専門領域を軽々と越えて、「パンク」という語と「パンクなイメージ」は、いつの間にかここ日本でもほぼ市民権を得ていると言っていい。「出どころ」である英語の世界と比べても、日本におけるこの定着ぶりは、ほとんど見劣りしないんじゃないかとすら正直思う。

 かく言う僕も、パンク・ロックによって「ロック音楽の聴きかたに目覚めた」者だ。だからもし自分が、「このくされパンクスが」なんて誰かに罵倒されたならば、まあしょうがないよね、本当にそうなんだから――というぐらいの自己認識は、つねにある(決してそれが誇らしいわけではないのだが、しかし事実として)。
 
 そんなパンク・ロックの「スタイル」や「概念」の起源はただひとつ、1970年代の英米のポップ音楽シーン、その片隅だった。ロック音楽のサブジャンルに端を発するものこそが、「パンク」の源流だった。