パンク・ロックの
ざっくりした全体像

 音楽ジャンルとしてのパンク・ロックは、70年代半ばに確立したものだ。おおよそ、楽曲の概観としては、以下のような傾向が強い。

 まずは、エレクトリック・ギターだ。回転する旋盤や作動中の削岩機などと評されることもある、激しく、ささくれ立って、かつタイトなギター・サウンド。おもにコード・カッティングもしくは「リフ」を弾き、長いソロなどほとんどない。だからベースの主張力がとても重要となる。そんな音像を、シャープでタイトかつ「速い」ドラムスの8ビートがバックアップしていく。つまり60年代初期、もしくは50年代に先祖返りしたかのようなシンプルなロックが原型だ。ロック界にて巨大に成功した「最初の」リヴァイヴァル・ムーヴメントだと解釈することもできる。とはいえ、これが単なるリヴァイヴァルでは済まなかったところが「事件」となった。

 パンク・ロッカーたちは、おもに「ビートルズ中期以前」の時代のロックから、「甘さ」「やさしさ」「さわやかさ」などをほぼ完全に「切除」して、荒っぽさ、生々しさ、トゲトゲしさ、野卑な高揚感などを抽出し、培養した。さらには「ビートルズになれなかった」60s~70s初頭のガレージ・バンドの魂の咆哮をも、我がものとした。墓場を掘り返し、亡霊たちを再決起させた。